artscapeレビュー
アルチンボルド展
2017年07月15日号
会期:2017/06/20~2017/09/24
国立西洋美術館[東京都]
これはおもしろかった。これまで国立西洋美術館で見た展覧会のなかでもベスト3に入る。いやベスト1といってしまってもいい。西洋美術館は昨年の「クラーナハ展」でも100人の中国人による模写を展示したり、最近ずいぶん企画力が増しているが、本展でもアルチン親分の作品はもちろんのこと、ミラノで影響を受けたであろう大先輩レオナルドの素描もあれば、魚類や鳥類を克明に描いた博物誌もある。また、アルチンが仕えたルドルフ2世のヴンダーカマーの紹介や、そのコレクション・アイテムである貴石を削った器に金銀細工を施した鉢も数杯来ていて、マニエリスム愛好家には見逃せない展覧会に仕上がっている。
さて、肝心のジュゼッペ・アルチンボルドは、「四季」「四大元素」のシリーズをはじめ、書物で構成された《司書》、樽やボトルを積み上げた《ソムリエ(ウェイター)》、肖像画を天地逆にすると静物画に見える《庭師/野菜》や《コック/肉》など、真筆の油絵だけで12点、帰属や追従も含めると約20点も来ている。これだけの数のアルチン作品が来るのはおそらく最初で最後だろう。驚くのは、12点の大半がヨーロッパの美術館に収まっているなかで、2点がデンバー美術館の所蔵であること。なんでまたロッキー山脈の山奥に……。もっと驚いたのは《ソムリエ(ウェイター)》が、近現代美術を集めている大阪新美術館建設準備室の所有になること。そもそもこの絵、初めて見るし、なぜか大阪新美術館のウェブサイトを見ても「主要作品」に載っていない。なのに同じサイトの「貸出中」の作品リストには載っているのだ。アルチン親分は「主要」ではないというのか。ともあれ、アルチンボルドと同時代を生きたブリューゲルと同じ時期に上野で作品が見られるというのは奇跡的なこと。
2017/06/19(月)(村田真)