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artscapeレビュー

岡本太郎×建築展 ─衝突と協同のダイナミズム─

2017年07月15日号

会期:2017/04/22~2017/07/02

川崎市岡本太郎美術館[神奈川県]

岡本太郎と建築の接点は意外に多い。例えば坂倉準三とは、戦前パリで彼がル・コルビュジエに師事していたころから親交があり、戦後は青山の岡本邸を設計してもらっている。アントニン・レーモンドや磯崎新とも一緒に仕事をしたことがある。だが、太郎が火花の散るような関係を切り結んだ建築家といえば、丹下健三をおいてほかにいない。丹下とは旧東京都庁舎、東京オリンピックの国立代々木競技場、大阪万博のお祭り広場と、大きなプロジェクトだけでも3回コラボレーションしたが、いずれも丹下が設計し、太郎がアートを手がけた。
だいたい建築家とアーティストがコラボする場合、まず建物が先でそこにアートを入れ込むことが多いので、アーティストのほうが立場的に弱い。それに、アートを取り除いても建物は残るが、建物を取り壊したらアートも消えてしまう。建築>アートなのだ。そのことに太郎が自覚的だったかどうかは知らないが、最後の万博のときに立場を逆転させてしまう。先に丹下が設計した大屋根をぶち抜くかたちで太陽の塔をおっ立てたからだ。このことは太郎のリベンジ(それは建築に対するアートのリベンジともいえる)として、しばしばおもしろおかしく語られてきた。後日談として、約20年後に丹下が新宿の新都庁舎を設計したとき、太郎が呼ばれなかったのは丹下の再リベンジだという見方もある。まあそれはないだろうけど、同展は「衝突と協同のダイナミズム」と謳いながら、どうもそのへんがよくわからない。

2017/06/04(日)(村田真)

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