2019年12月01日号
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artscapeレビュー

フレンチ・デザイン展「NO TASTE FOR BAD TASTE スタルク、ブルレック…」

2019年04月01日号

会期:2019/03/15~2019/03/31

21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー3[東京都]

先日、パリに駐在する日本人からこんな話を聞いた。彼は多くのフランス人と接するなかで、フランス人のなかに「アール・ド・ヴィーヴル」という思想があることに気づいたと言う。直訳すれば「暮らしの芸術」「日常に息づく芸術」ということだが、彼はこれを「心の琴線に触れる素晴らしいものを暮らしに取り入れること」と意訳してとらえていた。フランス人はそうしたものへの欲求が強く、暮らしに積極的に取り入れて人生を楽しみたいと考えるのだと言う。本展でもこの言葉が最初に登場し、腑に落ちた。

本展はVIA(フランス創作家具振興会)が主催する世界巡回展である。国際的に活躍するデザイナーや建築家、シェフら40人のクリエイターにより結成されたシンクタンクが、「フレンチ・デザイン」を定義する10のキーコンセプトを導き出し、これらを象徴する家具などのプロダクトを選出。会場ではテントに愛らしいイラストレーションが描かれた各ブースで、それぞれのキーコンセプトとプロダクトとが展示されていた。

東京展で紹介されたのは、10のうち5つのキーコンセプトである。それらは「ラグジュアリーの香るエレガンス」「持続可能な革新性」「大胆さ」「サヴォアフェール(職人技)」そして「アール・ド・ヴィーヴル」である。実際に観てみると、キーコンセプトとそのプロダクトとが「なるほど」と結びつくものもあれば、「そうなの?」と思うようなものもあったが、総じていずれのプロダクトもこれらのキーコンセプトに当てはまるような印象を受けた。


展示風景 21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー3
[photo : Ryoichi Suzuki]


やはりフレンチ・デザインは独特の魅力を持っている。誤解を恐れずに言えば、それは型にはまらないということではないか。「伝統」や「品格」といったキーコンセプトも10のうちに入っているので、もちろん破天荒や羽目を外すということではないのだが、結局は「心の琴線に触れる」ことをもっとも大切にし、生きるうえでの信条としているのではないか。タイトルの「NO TASTE FOR BAD TASTE」とは、「悪趣味のセンスはない」。フランス人の飽くなき芸術への追求と、それを世界に知らしめようとするアピール力を思い知った展覧会であった。


展示風景 21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー3
[photo : Ryoichi Suzuki]


公式サイト:https://www.lefrenchdesign.org/

2019/03/23(土)(杉江あこ)

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