2019年06月15日号
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artscapeレビュー

Oh! マツリ☆ゴト 昭和・平成のヒーロー&ピーポー

2019年04月01日号

会期:2019/01/12~2019/03/17

兵庫県立美術館[兵庫県]

関西へ。まずは神戸の兵庫県美でやってる「Oh! マツリ☆ゴト 昭和・平成のヒーロー&ピーポー」へ。一見おチャラけたお祭り騒ぎのタイトルなので、てっきりウルトラマンとかアンパンマンが並ぶサブカル系の資料展かと思ったら、そんなお子さま向けではなく(サブカルもあるけど)、むしろ戦後の日本で美術がいかに政治や社会と向き合ったかを問うきわめてマジメな、そしてずいぶん踏み込んだ展覧会だった。タイトルの「Oh! マツリ☆ゴト」には「お祭り」と「政(まつりごと)」が重ねられ、その主役であるヒーローとピーポー(ピープル)が時代によりいかに描かれたかが概観されている。

展示は「集団行為」「奇妙な姿」「特別な場所」「戦争」「日常生活」の5章に分かれ、その合間に月光仮面、ゴジラ、ウルトラマンというトピックスと、会田誠、石川竜一、しりあがり寿、柳瀬安里による同展のための新作が挟まれる構成で、とくに時代順に並んでいるわけではない。最初の章で印象的だったのは、戦前の阿部合成による《見送る人々》と、戦後の内田巌による《歌声よ起これ(文化を守る人々)》だ。同展にはこうした群像表現がたくさん登場するが、この2点は、前者の人々が左を向き日の丸を振って熱狂しているのに対し、後者の人々は右向きで赤旗を立てて静かに見上げるという対照的な構図。この2点に描かれたピーポーは一見正反対だが、同じ日本人の10年後なのだ。画面の隅に1人だけ正面(こちら)を向いて覚めた人がいるのが救いというか、不気味というか。

戦争画も出ている。藤田嗣治の《十二月八日の真珠湾》、鶴田吾郎の《神兵 パレンバンに降下す》、川端龍子の《越後(山本五十六元帥)》、蕗谷虹児の《天兵神助》などで、記録画、肖像画、神話画とバラエティに富み、戦争画もひとつでないことがわかる。戦争関連でいうと、会田誠の新作《MONUMENT FOR NOTHING V 〜にほんのまつり〜》は圧巻だった。ねぶた祭で使われるハリボテの手法で、巨大な戦没兵士の亡霊が国会議事堂らしき墓碑(?)に触れているシーンを表わしたもので、これがいちばん「Oh! マツリ☆ゴト」というタイトルの両義性と矛盾を表現しているように思えた。

ところで、タイトルは「昭和・平成のヒーロー&ピーポー」と続くが、この昭和+平成のおよそ90年間のうち後半の作品が少なく、とくに1970-80年代(昭和でいうと最後の約20年間)がすっぽり抜け落ちていることに気づく。これは図式的にいえば、70年の安保闘争の敗北以来アートがモダニズムの終焉とポストモダニズムの台頭に振り回され、政治や社会から離れてしまったせいだろう。この間、東西冷戦下でつかの間の平和が保たれていたものの、それがアメリカの巨大な核の傘の下であったことを忘れていた、いや忘れようとしていたわけで、その事実を否応なく突きつけたのが1989-90年の昭和の終わりであり、ベルリンの壁の崩壊であり、冷戦構造の終焉にほかならない。その後90年代以降に登場する柳幸典や会田誠やChim↑Pomらが同展に選ばれているのは、いずれも政治や社会に再び回帰しているからだ。

2019/03/15(金)(村田真)

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