2019年10月15日号
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artscapeレビュー

戦後の浪華写真倶楽部──津田洋甫 関岡昭介 酒井平八郎をめぐって

2019年04月01日号

会期:2019/03/02~2019/03/24

MEM[東京都]

浪華写真倶楽部は1904(明治37)年、日本で最初に設立されたアマチュア写真家団体のひとつで、戦前は安井仲治、小石清、福森白洋らを擁して関西「新興写真」の拠点として輝かしい足跡を残した。戦中には一時低迷するが、戦後すぐに活動を再開する。今回のMEMでの展覧会には1948年に同倶楽部に入会した津田洋甫(1923~2014)、関岡昭介(1928~2016)、58年入会の酒井平八郎(1930~)の1950~60年代の作品から、全22点が出品されていた。

このところ、1950年代の写真に着目した展示が続いているが、それはこの時代の写真家たちの営みが、一枚岩ではない多様性を備えていることが少しずつ見えてきたためだろう。「リアリズム写真」と「主観主義写真」の並立というのが、この時代に対する基本的な見方だったのだが、本展などをみると、両者に単純に帰することのできない写真表現が、さまざまな場所で芽生えつつあったことがわかる。津田、関岡、酒井の写真がまさにそうで、社会的な事象、事物にストレートに目を向けた写真と、造形的、技法的な実験を試みた写真とが混じり合っている。関岡の《黒い山》、酒井の《ハトバの印象》、津田の《雨煙の中》などに写り込んでいるのは、まぎれもなく、まだあちこちに戦争の傷口が顔を覗かせているようなこの時代のざらついた空気感だ。

そう考えると、いま必要なのは「リアリズム写真」と「主観主義写真」、あるいはプロフェッショナルとアマチュア写真といった枠組をいったん解体して、そこから浮かび上がってくる「50年代写真」の総体を見極めることではないだろうか。それはまた、新たな角度から写真の「戦後」を問い直す試みの端緒になるのではないかと思う。

2019/03/10(日)(飯沢耕太郎)

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