2019年06月15日号
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artscapeレビュー

ラファエル前派の軌跡展

2019年04月01日号

会期:2019/03/14~2019/06/09

三菱一号館美術館[東京都]

ラファエル前派の展覧会だが、冒頭はターナーとジョン・ラスキンの素描が何十点も続く。同展はラスキンの生誕100年を記念する展覧会だから仕方がない。いささか退屈だが、この理論家の素描がこれだけたくさん見られるのは貴重だ。続いて、ラスキンの思想に共鳴し、ラファエル以前の自然に忠実な時代に戻ろうという画家たちの集まり、ラファエル前派の登場となる。

でも自然に忠実にといいながら、同時代のフランスのレアリスムと違って、中世の伝説などをモチーフに甘美で不自然な絵を描いていたように見える。出品作品には水彩画も多いが、水彩と油彩の違いもあまり感じられず(つまり油絵らしさに乏しい)、どっちかというと絵画芸術というより「イラスト」に近い。ロセッティの女性肖像画など夢見る少女イラストだ。それだけに大衆受けはするだろうが、モダンアートの流れに逆行するため美術史の傍流に位置づけられていたのだ。まあ主流よりも傍流のほうがおもしろいという見方もあって、ラファエル前派が受ける理由は案外そんなところにあるのかもしれない。たとえばアーサー・ヒューズの《ブラッケン・ディーンのクリスマス・キャロル―ジェイムズ・サリート家》や、ウィリアム・ダイスの《初めて彩色を試みる少年ティツィアーノ》などは、一種のキッチュとして楽しむことができる。

2019/03/11(月)(村田真)

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