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VOCA展2019 現代美術の展望─新しい平面の作家たち

2019年04月01日号

会期:2019/03/14~2019/03/30

上野の森美術館[東京都]

今年のVOCA賞は、金属板にグラフィティしたり、その表面を研磨して立体的なイリュージョンを醸し出す東城信之介の《アテネ・長野・東京ノ壁ニアルデアロウ摸写》。金属板の表面を研磨した作品はもう1点あって、三家俊彦の《Dream#4》がそれだが、比べてみると東城のほうが重層的で「絵」になっていることがわかる。VOCA佳作賞の遠藤薫は、ベトナムで雑巾を買って市場で古雑巾と交換し、その古雑巾を縫い合わせてつくった大きな平面を出品。そういう手続きを経ているので「ただの雑巾」でないのは確かだが、それでも少しずつ権威を帯びてきた感のある「VOCA展」のホコリを払拭するくらいの機能はあるだろう。

VOCA展の出品規定は250×400センチ以内の大きさで、奥行き20センチ、重さ80キロ以内の「平面」またはそれに準ずるものであれば原則的に受け入れる。そこに挑戦してくる作品も見どころのひとつだ。関川航平は壁に棚をつくってカラフルな積み木を積み上げ、9本の小さな塔を建てた。これは立体またはインスタレーションだが、巧妙にも積み木の表面に詩のような文字を彫っているため正面性があり、平面に準ずる作品と解釈できる。すぐ倒壊しそうな危うさも魅力だ。2階の奥に進むと、仮設壁を立てて入りにくくしているエリアがあって、その奥に1点だけ絵が飾られている。ずいぶん特別待遇だなと思って見ると、笹山直規の《Lines of Death》という死体を描いた絵だった。作品の物理的条件ではなく、死体とか猥褻とか政治的または宗教的な理由ではねられてきた作品はこれまでにもあったかもしれないが、こうした際どい作品はますます増えていくような気がする。

2019/03/13(水)(村田真)

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