2019年04月15日号
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artscapeレビュー

薄井一議「Showa96」

2019年04月01日号

会期:2019/03/08~2019/03/30

ZEN FOTO GALLERY[東京都]

ZEN FOTO GALLERYで開催されてきた薄井一議の「Showa」シリーズは、「Showa88/昭和88年」(2011)、「Showa92」(2015)に続いて今回が3回目になる。ちょうど平成の最後の時期の開催というのも感慨深いものがあるし、シリーズとしても今回で完結ということのようだ。

展覧会に寄せたコメントで、薄井はこう書いている。

「“昭和”が付くからと言って、別だんノスタルジーを追い求めている訳では全くない。僕は、この言葉を“生き抜く力”の象徴と考える。昭和がまだ別の時空で続いていたらどんな世界か、そんなファンタジーを追い求め、平成の終わりに第三弾が完成した」

「Showa」を「“生き抜く力”の象徴」と見る捉え方は、とても面白い。たしかに30年余り続いた平成時代は、日本人の生のエネルギーが、根こそぎ奪われていった時期に思えるからだ。薄井はそんな「Showa」を呼び起こすために、さまざまな場所に足を運び、奇妙な人物たちとの出会いを写真におさめていく。時にはその場所から何か特異な気配を感じ取り、演劇的な要素を取り入れてストーリー仕立てで展開したりもする。今回展示された写真でいえば、東京・大森の旧金子國義邸が取り壊される前に、ヌードや芸妓の格好をした女性を配して撮影した写真がそうである。2016年に日本青年館が閉鎖される前日に、わざわざ宿泊して撮影したという写真も興味深い。開いた窓からは、工事が始まったばかりの国立競技場の建築現場が見える。

薄井が「Showa」シリーズで積み上げてきた写真群は、ZEN FOTO GALLERY刊行の3冊の写真集にまとまり、かなりの厚みを持ち始めている。ぜひ、それらを、大きな会場で一度に見ることができる機会をつくってほしい。それとともに、薄井がこのシリーズの次にどんな展開を考えているのかも楽しみだ。

2019/03/08(金)(飯沢耕太郎)

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