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「メイド・イン・トーキョー:建築と暮らし 1964/2020」展

2020年02月15日号

会期:2019/10/11~2020/01/26

ジャパン・ソサエティー[米国、ニューヨーク]

ニューヨークのジャパン・ソサエティーに足を運んだ。エントランスの吹き抜けには、これまでなかった奈良美智の大きな作品が設置されている。これは購入したわけではなく、長期貸与の形式をとって、今後も定期的に変えていくという。



奈良美智の作品


さて、訪問の目的は、アトリエ・ワンとディレクターの神谷幸江によって上階のギャラリーで企画された「メイド・イン・トーキョー:建築と暮らし 1964/2020」展である。「メイド・イン・トーキョー」は、東京の複合建築を調査した彼らのプロジェクトの名称でもあるが、今回の狙いは、タイトルに含まれる二つの年号からもうかがえるように、前回と今回のオリンピックの時代における東京建築を比較することだ。それゆえ、会場では仮設壁で囲まれた空間を入れ子状につくり(両側の端部が湾曲したかたちは、スタジアムの見立てらしい)、その外側を1964年、内側のエリアを2020年に割り当て、模型、写真、映像、ドローイングなどを用いて、作品を紹介する。興味深いのは、壁には開口部を設け、二つの時代を同時に観察できる場所があちこちに生じていることだ。会場デザインも、アトリエ・ワンが手がけている。



2020年のエリア


またいくつかのビルディング・タイプ やテーマを設定し、おおむね入口から順番に「競技場」、「駅」、「リテール」、「オフィス」、「カプセル」、「住宅」といったジャンルごとに各時代の代表作を選んでいる。総花的に多くの事例を紹介するというよりは、作品の数はかなり絞り込んでいる。例えば、《国立代々木競技場》と《新国立競技場》、《そごう》と《GINZA SIX》、《中銀カプセルタワービル》と《9h》、《塔の家》と《西大井のあな》などだ。やはり、すでに半世紀以上に及ぶ歴史の審判を受けた定番の名作を並べると、どうしても近年できたばかりの東京建築は重厚さや大胆さに欠ける印象を受けるが、こうした状況そのものが時代の変化を示しているのかもしれない。



左が丹下建三《国立代々木競技場》、右が隈研吾の《新国立競技場》



手前に現代のビックカメラ、奥に昔のそごうが見える




黒川紀章《中銀カプセルタワービル》



浅草の《9h》


なお、同展は、建築だけでなく、ハイ・レッド・センター、山口勝弘、小沢剛、AKI INOMATA、竹川宣彰、風間サチコなど、建築や都市に関わる新旧のアーティストの作品や活動も紹介し、別の角度から、それぞれの時代の雰囲気を伝えていた。



風間サチコの作品

2020/01/15(水)(五十嵐太郎)

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