artscapeレビュー

PGI Summer Show 2019 “monoとtone”

2019年08月01日号

会期:2019/07/10~2019/08/24

PGI[東京都]

PGIではほぼ毎年、夏のこの時期に若手写真家たちのグループ展を開催してきた。今年は小島康敬、嶋田篤人、田山湖雪、西岡広聡、平本成海の5人が、それぞれのモノクローム作品を発表している。たしかに、デジタル化が完全に行きわたった現在でも、銀塩プリントのモノクローム写真にこだわる写真家は意外に多い。デジタルカメラ、デジタルプリンタを使っていても、あえてモノクロームで出力することもある。それだけの根強い魅力があるということだろう。

今回発表された5人の作品を見ると、やはり白から黒までの精妙で豊かなトーンコントロールができるという点が大きいのではないだろうか。カラープリントだと、どうしても作家の思惑を超えたノイズが写り込んでくるが、モノクロームなら画面の隅々にまで意識を働かせることができるからだ。ベルリンの都市風景を切り取る小島、風景を断片化して再構築する嶋田、祭りなど日常と非日常の境界に目を向ける田山、夜の建物の微妙な気配を探索する西岡、謎めいたパフォーマンスを披露する平本と、作風の幅はかなり広いが、画面を破綻なく構築していく能力の高さは共通していた。

逆にいえば、小さくまとまってしまいがちだということで、今回の展示に関しても、思考と実践のダイナミズムを感じる作品はほとんどなかった。作品としてのまとまりやクオリティを追求するだけではまだ物足らない。なぜモノクロームなのかという問いかけが、あらためて必要になってきそうだ。グループ展なので、各自に割り当てられたスペースが小さかったということは割り引いても、「暴れる」写真をもっと見たかった。モノクロームでも、それは充分に可能なはずだ。

2019/07/10(水)(飯沢耕太郎)

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