artscapeレビュー
イサム・ノグチ 発見の道
2021年06月01日号
会期:2021/04/24~2021/08/29
東京都美術館[東京都]
昨秋開催予定だったのがコロナ禍で半年間延期になり、ようやく開かれたと思ったら、緊急事態宣言発令のためわずか1日の公開で閉じてしまった悲運の展覧会。会期は8月29日までたっぷりあるので、まさかこのまま終了にはならないと思うけど……。イサム・ノグチの作品は、これまで展覧会やニューヨークのノグチ美術館などで目にしてきたが、どこかユーモラスな彫刻もさることながら、照明デザインやモニュメントなども手がけていることもあって工芸的に見え、あまり興味が持てなかった。でも今回の展覧会はおもしろかった。どこがおもしろかったのかといえば、作品そのものではなくディスプレイだ。
地階の入り口を入ると壁がすべてとっぱらわれ、だだっ広い展示室に作品を点在させている。ほほう、そうきたか。中央には球形の「あかり」が100点以上ぶら下がり、その下を歩くこともできる。それを囲むように石や金属の抽象彫刻が一見ランダムに置かれている。1階、2階もほぼ同様の展示だ。制作年代もまちまちなので、彫刻の発展過程を学ぶとか、作品の意味を考えるみたいな教養趣味の押しつけがましさはなく、奇妙な形のオブジェの周囲を自由に巡り歩く楽しさがある。ちなみに1階では、隅にソファと「あかり」が置かれていたため、まるで家具のショールームのようにも見えてしまった。それはそれでイサム・ノグチの本質が現われているのかもしれない。
このように壁に沿って作品を展示するのではなく、床に点在させているため、キャプションの位置が難しい。キャプションを床に置けば見苦しいし、歩行の妨げにもなるので、ここでは当該作品に近い壁にキャプションを貼っている。でもそれだけではどの作品のキャプションかわかりづらいので、作品の略図まで載せているのだ。ただ相手は彫刻なので、略図はキャプションの位置から見た姿でなければならず、いうほど簡単なことではない。いろいろ工夫しているなあ、と感心する。
2021/04/23(金)(村田真)