artscapeレビュー

モネ─光のなかに

2021年06月01日号

会期:2021/04/17~2022/03/30

ポーラ美術館[神奈川県]

ポーラ美術館は約1万点のコレクションを有するが、藤田嗣治コレクションと並んで充実しているのがモネ作品で、国内最多の19点を誇る。うち11点が、建築家・中山英之のデザインした空間の中で展示されている。選ばれた作品は《睡蓮の池》《ルーアン大聖堂》《国会議事堂、バラ色のシンフォニー》《サルーテ運河》など、主に夕暮れ時の微妙な光を捉えたものが多い。まず、トタンのような波型の板を角ができないように湾曲させて壁をつくり、その上に絵を掛けている。中山氏によれば、苦労したのは、作品を覆うガラス面に背景が映らないようにすることで、そのために壁の曲面の角度や絵の配置を考え抜いたという。

照明は直接絵に当てず、裏から天井に向けて光を当てた反射光で見せているので、少し薄暗い印象だ。もちろんこれは絵に描かれた風景に合わせてのことで、日の出2時間後、日の入り2時間前の薄明を意識しているのだそうだ。とはいえ《セーヌ河の日没、冬》みたいな日没の暗い光もあるので、すべての絵にとって適切な照度とはいえない。そこで中山氏が徐々に赤みがかった照明に変えてみせると、《セーヌ河の日没、冬》から鮮やかな夕日が浮かび上がってくるではないか。そこまでやるか? そこまでやるならゴテゴテうるさい額縁を一掃して、MoMAのようにシンプルなフレームに統一してほしいと思った。だって額縁がいちばん目障りなんだもん。

2021/04/16(金)(村田真)

2021年06月01日号の
artscapeレビュー