2021年09月15日号
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artscapeレビュー

パビリオン・トウキョウ2021、水の波紋展2021 消えゆく風景から ─ 新たなランドスケープ(前編)

2021年09月01日号

[東京都]

いま東京オリンピック・パラリンピックに連動して、都内のあっちこっちで街頭展が開かれている。主なものだけでも「パビリオン・トウキョウ」「水の波紋」「東京ビエンナーレ」などがあるが、特に「パビリオン・トウキョウ」と「水の波紋」の作品は、新国立競技場にほど近い神宮前・青山界隈に集中しているので、2日に分けてまとめて見に行った。ちなみに、「パビリオン・トウキョウ」は東京都および都の財団などが主催し、地元のワタリウム美術館が企画。「水の波紋」はそのワタリウム美術館の主催だ。

まず、青山一丁目から246(青山通り)を渋谷方向へ歩くと、イチョウ並木入り口の左右に築かれた段ボールとブルーシートのお城が見えてくる。「パビリオン・トウキョウ」のひとつ、会田誠の《東京城》(2021)だ。ホームレス愛用のチープで丈夫な素材を使って、中心が空っぽなハリボテの「東京城」を建てるという発想が秀逸だ。以前、ホームレスのたまり場だった新宿西口にゲリラ的に段ボールのお城《新宿城》を築いたことのある会田だが、今回は明治天皇の事績をたどる聖徳記念絵画館を正面に見据える絶好のロケーションに、東京都のお墨付きを得て設置。プランを出した会田もエライが、それを実現させた事務局や関係者もエライ。ちなみに、この日は台風の去った後だけに吹き飛ばされてないか心配だったが、表面は段ボールとブルーシートだけど内部は補強してあるため、ちゃんと建っていた。安心した反面、ちょっぴり不満でもあったのは、吹けば飛ぶような東京城であってほしかったからだ。積み上げた段ボールがつぶれていく過程を見せた野村仁のように、この「東京城」も崩壊していく姿を見たいなあ。



会田誠《東京城》[筆者撮影]


246を少し入った梅窓院の岩の周囲に、時代物の扇風機を並べたのはデイヴィッド・ハモンズ。《ロックファン》(1995)という題名を聞くと脱力してしまうこの作品、前にも見たことあるなあと思ったら、26年前にヤン・フートを総合監督に招いて行なわれた「水の波紋95」に出品されたものの再展示だった。再展示作品はほかにも、簡易物置小屋をインスタレーションに使った川俣正の《プレファブリケーション・東京/神戸》(1995)、その屋根の上にピンク色のいびつな物体を載せたフランツ・ウエストの《たんこぶ》(1995)など、いくつかある。この川俣+ウエストの作品がある246の一本裏は昔、都営団地が建っていたところ。その半分はいつの間にか取り壊されてきれいに再開発されていたのだ。その外苑寄りには解体を待つ無人の都営団地がひっそりとたたずみ、路地に面して小さな公園がある。梅沢和木はそこの遊具をコラージュした巨大壁画《くじら公園アラウンドスケープ画像》(2021)を掲げている。これは力作。(上記3点は「水の波紋展2021」)



上部:フランツ・ウエスト《たんこぶ》 下部:川俣正《プレファブリケーション・東京/神戸》[筆者撮影]


246を渋谷方面に進むと、国連ビルの前に巨大なお椀が見えてくる。木材をつなぎ合わせて穴だらけの半球体にした平田晃久の《Global Bowl》(2021)だ。その先の、閉鎖されたこどもの城とその前に立つ岡本太郎のモニュメントのあいだには、木を組んで植木鉢を並べた藤原徹平の《ストリート ガーデン シアター》(2021)がある。この2人は建築家で、どちらも「パビリオン・トウキョウ」の出品作品。よくも悪くも建築家の作品は優等生的で、会田誠のようなトゲがない。

さらに渋谷方向に進んで右に折れると、学校跡地を利用した渋谷区の分庁舎があり、その前に車体を巨大カメラに改造した軽トラが止まっている。フランスのアーティストJRが世界各地で展開している《インサイドアウトプロジェクト》(2011-)で、希望者のポートレートを撮影し、大きく引き伸ばして屋外に展示していく作品だ(「水の波紋展2021」)。庁舎内では「パビリオン・トウキョウ」の草間彌生、「水の波紋」の笹岡由梨子や竹川宣彰らが展示していたが、屋内作品は割愛。



JR《インサイドアウトプロジェクト》[筆者撮影]


パビリオン・トウキョウ2021

会期:2021/07/01〜2021/09/05
会場:新国立競技場周辺エリアを中心に東京都内各所
ビクタースタジオ前/明治神宮外苑 いちょう並木入口/国際連合大学前/旧こどもの城前/渋谷区役所 第二美竹分庁舎/代々木公園 パノラマ広場付近/kudan house庭園/浜離宮恩賜庭園 延遼館跡/高輪ゲートウェイ駅 改札内
公式サイト:https://paviliontokyo.jp/

水の波紋展2021 消えゆく風景から — 新たなランドスケープ

会期:2021/08/02〜2021/09/05
会場:東京・青山周辺 27箇所(岡本太郎記念館、山陽堂書店、渋谷区役所 第二美竹分庁舎、テマエ、ののあおやまとその周辺、梅窓院、ワタリウム美術館とその周辺)
公式サイト:http://www.watarium.co.jp/jp/exhibition/202108/

2021/08/10(火)(村田真)

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