artscapeレビュー
画廊からの発言 新世代への視点2021
2021年09月01日号
会期:2021/07/17~2021/10/17
藍画廊+GALERIE SOL+ギャラリーQ+ギャラリー58+ギャラリーなつか+ギャラリイK+ギャルリー東京ユマニテ+コバヤシ画廊[東京都]
真夏恒例の「新世代への視点」展。銀座・京橋界隈の画廊まわりも近年めっきり減ってしまったが、せめてこの企画展だけは見に行くようにしている。貸し画廊から出発したギャラリーが10軒ほど集まって「新世代への視点」を始めてから早30年近い。初回より参加しているオリジナルメンバーは半減したが、うれしいのはそれぞれの画廊のおねえちゃんおにいちゃんが、もはやおばあちゃんおじいちゃんと呼んでも差し支えない年齢になっても相変わらず顔を出してくれること。もちろんそういうぼくも彼女ら彼らと同じく歳を重ねているわけで、だからこそ気になるのは「新世代への視点」がボケてこないかということだ。
同展は40歳以下の新鋭作家を対象にしており、当初は画廊のオーナーと同世代か少し下の「新世代」を選んでいたのに、年を経るごとに作家との年齢差が開き、いまや自分の子かヘタすりゃ孫くらい歳の離れた「新新世代」を選ばなくてはならなくなっているのだ。急いで断っておくが、だからといって早く引退しろとか、「孫世代への視点」にタイトルを変えろとかいいたいのではない。ただぼく自身が近ごろ感じるように、いつの間にか時代に取り残されていないだろうかと一抹の不安を感じただけなのだ。もちろん漠然とそう思ったのではなく、作品を見ての感想だ。
今年は昨年と違い、出品作家は男女半々で、作品も絵画、版画、彫刻、漆芸、アニメ、インスタレーションと多岐にわたっている。なかでも、一見プリミティブな風景画ながら、色彩といいタッチといい実に巧みな衣真一郎の絵画(藍画廊)や、リアルな情景描写にマンガチックな表現を組み合わせた芦川瑞季のリトグラフ(ギャラリーなつか)、動物の頭蓋骨やコロナウイルスを緻密に描き出す豊海健太の漆芸(ギャルリー東京ユマニテ)などは、技術的にも時代の表現としても見応え十分。でもそれ以外は技術的に稚拙だったり、なにも伝わってこない作品もあったりして、やや不満が残った。「新世代」もがんばってほしいが、「新世代への視点」も研ぎ澄ませてほしい。
公式サイト:http://galleryq.info/news/news_newgeneration2021.html
2021/08/04(水)(村田真)