artscapeレビュー
CHIBA FOTO
2021年09月01日号
千葉市美術館、千葉市中央コミュニティセンター ほか[千葉県]
「千葉市で初めて行われる芸術祭」として開催された「千の葉の芸術祭」の一環として、「写真芸術」に特化した「CHIBA FOTO」がスタートした。会場は千葉市中央区エリアと稲毛区エリアの2カ所に分かれ、あわせて13の会場で写真展が開催されている。出品作家は新井卓、宇佐美雅浩、金川晋吾、川内倫子、北井一夫、蔵真墨、佐藤信太郎、清水裕貴、楢橋朝子、本城直季、横湯久美、吉田志穂の12名、それに稲毛海岸の歴史を写真で辿る「海の記憶を伝える 稲毛アーカイブ展」(千葉市民ギャラリー・いなげ 2階)が加わった。
第1回目ということで、まだ手探り状態だが、中堅以上のすでに実績のある写真作家をフィーチャーして、クオリティの高い展示を実現しようとした意図はよく伝わってきた。千葉県在住、あるいは千葉県出身の宇佐美雅浩、川内倫子、北井一夫、佐藤信太郎、本城直季らは、それぞれ自分とかかわりの深いテーマで出品している。父親がJFEスチール(旧川崎製鉄)の千葉工場に勤めていた宇佐美雅浩が、同社社員の協力を得て制作した演出的な群像写真「宇佐美正夫 千葉 2021」(そごう千葉店9階 滝の広場)の展示など、そのコンセプトがしっかりと実現していて見応えがあった。
千葉と直接かかわりのないテーマで出品した作家の場合も、「旧神谷伝兵衛稲毛別荘」の2階スペースで展示された横湯久美「時間 家の中で 家の外で」のように、高度な内容の作品がそれにふさわしい器を整えて展示されていた。会場デザインを統括したアートディレクター、おおうちおさむの能力の高さが充分に発揮されていたといえる。
課題として感じたのは、13の会場が広くちらばっているので、1日で全部回るのはかなりむずかしいということ。わかりにくい場所も多いので、どう回ればいいのかを細かく指示したマップが必要だろう。また、クオリティの高い作品だけが並ぶと、逆に均質な印象が生じてくる。いい意味での玉石混交というか、学生や若手の写真家たちのエネルギッシュな作品も交えるといいかもしれない。長く続いてほしい企画なので、来年以降に期待したい。
公式サイト:https://sennoha-art-fes.jp/chibafoto/
2021/08/22(日)(飯沢耕太郎)