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大和田良 写真展「宣言下日誌」

2021年09月01日号

会期:2021/07/22~2021/08/15

Roll[東京都]

新型コロナウィルス感染症の拡大にともなう緊急事態宣言は、2021年8月後半現在も、東京をはじめ各地で発令中である。とはいえワクチン接種の加速化もあって、感染者数は増えているものの、昨年4月から5月に第1回目の緊急事態宣言が出された当時の緊張感はもうない。いまふり返ってみると、あの時期に「パンデミック」という多くの日本人にとっては初めての経験にどんなふうに対応したのかは、写真家たちにとってもかなり重要なテーマなのではないだろうか。

今回の「宣言下日誌」展は、そのことにいち早く取り組んだ作例といえる。大和田良は、当時ほとんどの仕事がキャンセルかリモートになり、「巣ごもり」を余儀なくされた。そのことで、逆に「『写真とはなにか』という本来的な関心」に立ち戻らざるを得なくなる。日々の出来事を記したテキストを書き、写真を撮影し(当然、家の中や身近な環境が多くなる)、それらをプリントし、配列していくことで、彼もまた多くの写真家たち同様に「原点回帰」を意識するようになった。

この時期に撮影した写真を、古典技法であるサイアノタイプでプリントしたのもそのためだろう。自分で調合した感光乳剤を紙に塗ってプリントすることによって、手作業を重視してきた写真のあり方を再考することができた。さらに、このプリント技法によって得られる深い青味を帯びたトーンが、当時の気分にぴったり合っていたということもありそうだ。

今回の展覧会は、藤木洋介がプロデュースする新ギャラリーRollのお披露目を兼ねていた。会場には大和田の旧作も並んでおり、そのために企画意図がやや拡散してしまったことは否定できない。「宣言下日誌」だけに絞った方が、よりすっきりとした展示になったのではないだろうか。

2021/07/22(木)(飯沢耕太郎)

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