artscapeレビュー

トミモとあきな/森本眞生 作品展「The Facing Mirrors」

2021年09月01日号

会期:2021/08/16~2021/08/22

Place M[東京都]

このところ、表現力を開花させつつある同世代の女性写真家の2人展である。トミモとは銀座ニコンサロンなどでの発表を重ね、2020年に最初の写真集『mamono』(Place M)を刊行した。森本は瀬戸正人が主宰するワークショップで学び、今年3月に初個展「わたしの森」(Place M)を開催した。2人とも日常に潜む「魔」のようなものを鋭敏に嗅ぎ当て、ヴィヴィッドな色彩を強調するカラー写真に焼き付けていく。それぞれ25点ずつの作品を、同一画面にカップリングして展示した本展では、互いの写真の世界が融合することで、さらにパワーが増すことを期待したのだが、予想通りにはいかなかったようだ。

ひとつには、横位置の写真を上下に重ねたレイアウトの作品が多かったので、やや平板で意外性に乏しい組み合わせになったということがあるだろう。縦位置同士の写真も数点あったのだが、そちらの方が緊張感のある構成になっていた。また、2人の写真の親和性が強すぎて、あまり区別がつかないということもあった。もし、今後もユニットとして活動していくならば、同じ被写体を撮り下ろしたり、写真の大きさにメリハリをつけたりするなどの工夫が必要になってくるのではないだろうか。

トミモとも森本も、写真家として一皮剥けていく大事な時期に差しかかっている。今回の2人展は、むしろソロとしての活動をスケールアップしていくための契機と捉えたい。きっかけさえつかめれば、2人とも次のステップに踏み出していくことができそうだ。

2021/08/16(月)(飯沢耕太郎)

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