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ガブリエル・シャネル展 Manifeste de mode

2022年07月15日号

会期:2022/06/18~2022/09/25

三菱一号館美術館[東京都]

欧州のような上流階級の社交界がほとんど存在しない日本では、シャネルというと、そのわかりやすいダブルCマークも相まって、ひと昔前はバブル時代の象徴というイメージが強かった。ファッションが多様化した現在では、もう少し様相が異なるのかもしれない。しかし本展で紹介されたシャネルは、そんな消費社会、日本でのイメージとはずいぶん違っていた。シャネルは革新的ブランドであり、またガブリエル・シャネルは新しいことに挑戦し続けた強い女性デザイナーだった。

シャネルが成し遂げたことで有名なのが、コルセットからの解放である。女性のウェストを細く見せるための補正器具は、拷問器具とも揶揄されるほど、父権社会の象徴であったが、19世紀頃まで上流・中流階級の女性の間で広く着用されてきた。婦人用帽子のデザイナーとして活動を始めたシャネルは、1920年代に婦人用衣服も手掛け始めると、コルセットや何層にも及ぶ下着類をあっさりと排除し、シンプルで動きやすく、着心地の良いデイウェアを考案した。代わりに取り入れたのが、女性視点によるエレガンスである。ウェストはくびれていないけれど、女性の自然な身体のラインを尊重したドレスを発表したのだ。現代の我々から見れば、こうした身体のラインを拾わない女性ファッションは珍しくないが、この原点がシャネルにあったのかと思うと、見方がずいぶん変わる。シャネルは相当、斬新なブランドだったのだ。


ガブリエル・シャネル ドレスとジャケットのアンサンブル(1922-28)
絹ジャージー パリ、パトリモアンヌ・シャネル ©Julien T. Hamon


ガブリエル・シャネル 香水「シャネル N°5」(1921)
ガラス、木綿糸、封蝋、紙 パリ、パトリモアンヌ・シャネル ©Julien T. Hamon


「伝統は革新の連続である」という言葉どおり、いくつもの革新の連続があってこそ、現代のファッションはある。とりわけコルセットからの解放は、女性解放運動ともつながった。かつて男性が女性を支配していたフェティシズム的な視点から、女性が本来望む自然な美しさの視点へ。それは男性に媚びなくても、女性が自立して生きられるようになった社会の到来とも結びついている。本展を観にきていた来場者も、幅広い年齢の女性が多かったのが印象的だった。


ガブリエル・シャネル テーラードのジャケット、スカート、ブラウスとベルト(1965春夏)
ウールツイードと絹シェニール、手彩色のガラリット、絹ガーゼ パリ、ガリエラ宮 ©Julien T. Hamon



公式サイト:https://mimt.jp/gc2022/

2022/06/18(土)(杉江あこ)

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