artscapeレビュー

ミントデザインズ大百科:Mintpedia

2022年07月15日号

会期:2022/06/08~2022/06/19

スパイラルガーデン[東京都]

ミントデザインズの展示を私が初めて観たのは、2009年のミラノサローネだったように思う。日本の合成繊維の未来を示唆する企画展で、メーカーやデザイナーらが大勢参加したなかにミントデザインズも名を連ねていた。彼らは熱可塑性の特徴を持った不織布を使い、理想的なバランスの美人顔やチンパンジーの顔に成形したマスクを発表していた。それは後に「to be someone」と名づけられ、彼らのコレクションとして製品化された。当時、この展示を観たときに私はいまひとつピンと来ていなかったのだが、コロナ禍になったいま、このユニークなマスクの先進性を改めて思い知った。皆の顔がどうせマスクで覆われるのなら、いっそのこと楽しく見える方が良い。「服には着る楽しみがありますが、それを見る人も楽しませるものであって欲しい」というのが、彼らが大切にしてきた視点だ。そんな遊び心がミントデザインズの作品には通底してある。


旭化成の不織布「スマッシュ」を使用しデザインしたマスク(2009)


本展は今年で20周年を迎えるミントデザインズの仕事を紹介した展覧会だ。彼らがブランド設立当初に掲げたコンセプトは「プロダクトデザインとしての衣服」。それはトレンド(流行)ではなく、日常生活を豊かにする息の長い製品という意味である。衣服のデザインをプロダクトデザインと捉えるファッションデザイナーはたまにおり、私はそんなデザイナーらに共感を覚える。


展示風景 スパイラルガーデン[撮影:神宮巨樹]


プロダクトデザインと言い切る彼ららしく、本展ではデザインが生まれる背景にもスポットを当てていて興味深かった。道具やモックアップ、デザインスケッチなどが標本のように並んでいたほか、彼らへのインタビューや制作風景の一部を映像で見ることができた。なかでももっとも見応えがあったのは、ミントデザインズの特徴であるグラフィカルなオリジナルプリント生地を生産する工場で、実際に使用されている捺染用のシルクスクリーンの版が展示されていたことだ。その向かいの壁にはプリントドレスが整然と吊るされており、「この版でプリントされた生地がこんなドレスに!」と両者を照合することができ楽しかった。こうした展覧会を通して、衣服をデザインすることや生産することに興味を持つ人が少しでも増えるといいなと思う。


展示風景 スパイラルガーデン[撮影:神宮巨樹]



公式サイト:https://www.spiral.co.jp/topics/spiral-garden/20-mintpedia

2022/06/16(木)(杉江あこ)

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