2019年07月15日号
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artscapeレビュー

iQのトヨタマジック

2009年02月01日号

1997年にトヨタが発売した世界初のハイブリッドカー・プリウスは、その発想と技術力そしてデザインから未来を先取りするクルマとして輝いて見えた。2008年秋に発表されたトヨタのiQは、クルマの未来に向けたトヨタからの新たな挑戦と見ることができるかもしれない。そのユニークなコンセプトとデザインは、昨年のグッドデザイン大賞受賞に見られるように高く評価されている。

 最近、街のディーラーに実車が置かれ、試乗もできるようになったので乗ってみた。一番驚かされたのは、全長2,985mmしかない超ミニカーでありながら、実際に運転してみるとそのサイズを感じさせないことである。車幅1,680mmのサイズが効いている。運転席のスペースは小型車並みであり(後部座席のスペースは限られるが)、エンジン、ステアリング、サスペンションなどの感覚はすべての面で小ささを感じさせない。

 メルセデスのsmartや日本の軽自動車は、近年、走りと居住性の質感が驚異的に上がっているが、やはり運動性能にしても居住性にしてもミニカーであることのエクスキューズがどこかに残っている。iQは、ミニカーでありながらその運転感覚はミニカーでない。ここにトヨタマジックがある。特殊で斬新なクルマを普通のクルマとしてマーケットに送り込める高度な技術とクルマづくりの哲学が強く感じられた。もちろん、燃費とCO2排出量など環境面での性能はトップクラスであり申し分ない。一見したところ、smartのトヨタ版のようにも受け止められる向きがあるが、実車を見て、触れて運転してみると独自のポリシーを持っていること、独自の造型感覚でつくられていることを強く感じた。

 発売後、2カ月間で約8,000台という予想を上回る受注を得たという。室内空間的にはより大きく余裕があるヴィッツよりも数十万円高いという価格設定は、iQの普及に影響を及ぼすかもしれないが、クルマ社会の未来を考えたときにいまチャレンジすべきであるとのトヨタの英断がこの小さなクルマに凝縮されているように思われた。路上にiQが増殖し始めたら、日本の道路に新たな風景が生まれるだろう。

iQ受注約8,000台

画像:パリ・モーターショー2008でも話題のiQ[筆者撮影]

2009/01/20

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