2019年07月15日号
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artscapeレビュー

川染喜弘/ツポールヌa.k.a. hot trochee「(音がバンド名)presents」

2009年02月01日号

会期:2009/01/26

円盤[東京]

magical, TVで不完全燃焼だった小林亮平を再度見たくて、川染喜弘と組む(音がバンド名)の自主企画へ。それぞれのソロ。観客数は10人弱と少ないが、きわめて衝撃的な上演だった。
ツポールヌa.k.a. hot troche(小林亮平)は、終始、背中を向け、しゃがんだままマイク越しに「あれ?」とか言っている。もうはじまっている? 1時間の上演の9割は、機材のコンセントを探したり、接触の具合を直したりに費やされる。しっかり準備しておけよ!と非難するのはお門違い。なぜなら彼(ら)のパフォーマンスの真髄は準備の過程に、あるいは作品と作品の間にあるのだから。爆笑のピークは、接触の悪いリズムマシーンが直るとすかさず阪神の小さなプラスティックバットでぶっ叩きつづけ、また音が止まると「あれ?」と直す瞬間。因果の自家中毒が生む奇怪な時間。狂気の沙汰はつづき、最後は、触れると50音の鳴る幼児用のボードを取り出し、観客と一緒にこっくりさん。失策のみの演奏が不思議と退屈でないのは「準備」がひとつのフレームになって機能しているからこそに違いない。そうしたフレームへの意識が明らかである故に、小林(や川染)の行為はアートとして評価すべきものとなっていた。
続いて登場した川染は、高いテンションで観客を煽り、このフレームを巧みに観客に語り出す。川染め曰く「これから即興のオペラをはじめる」と。ただし、「思い浮かんだ瞬間、ストーリーばかりか漏らした単語の1音までずたずたにカット&ペースト+エフェクトしていく」と。そこで「村」をカットし代わりに床に落ちていた「ビニール」をペースト。「銃声」をカットし「ヘリコプター音」をペースト。これをひとり全身で実行。音楽的なアイディアが演劇をラディカルに変容させる。とはいえ、きれいにまとまるどころか延々とリハーサルとも上演ともつかぬ時間が止まらない。途中で、発泡酒を煽ると「カンフー少女」が暴れ出すという突拍子のないレイヤーが差し込まれた。とっさに浮かぶ思いつきとそれをとっさに加工・解体する、その連続。
これは、完成を拒んで、行為する身体とはいったいなんなのかを問い、問うて遊ぶゲームである。川染と小林はぼくの知る限り、いまもっとも根本的かつキュリアスかつキュートなパフォーマーだ。

2009/01/26(月)(木村覚)

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