artscapeレビュー

山内圭哉(脚本・演出・主演)「パンク侍、斬られて候」

2009年02月01日号

会期:2009/01/20~2009/02/01

本多劇場[東京]

学生に誘われたまたま見た。なるほど大衆芸術としての演劇とはこうしたものかと思わされる。町田康の同名小説が原作。愚行をつづけこの世の糞とみなされ排出(殺害)されることで、この世の嘘から自由になろうとする「腹ふり党」と、その力を借りて権力闘争を画策する者たち、また彼らに仕える侍たちが織りなす面白おかしい、ときにグロテスクな芝居。
山内扮するパンク侍を中心にあっという間、前半の90分が過ぎる。山内の飄々とした台詞回しがなんとも絶妙。台詞回しばかりではない、ギャグのテイストやいざ殺陣のシーンになるとCG映像へ転換するやり口など、いちいちの仕掛けがことごとく的確で、そのなかに今日の本国の政治に対する揶揄を溶け込ませるなんてスパイスも忘れない。爆笑/失笑の連続に、まるで自分の心が分析尽くされているような気にさせられる。マッサージチェアー?いや、もう、これはほとんど人間科学。と感心しつつ、次第に狙われたツボがお約束過ぎとも思いはじめた後半、「腹ふり党」の踊りが狂気を帯びた暴走と化し、世界が混沌としてくる。混沌の行く先は判然としないまま、さきほどまでの心地よさはかき消され、舞台の激しさに笑いつつ戸惑ううち終幕となった。

2009/01/21(水)(木村覚)

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