artscapeレビュー

ジェームズ・ウェリング「Notes on Color」

2009年04月15日号

会期:2009/02/05~2009/03/14

WAKO WORKS OF ART[東京都]

東京都写真美術館から西新宿のWAKO WORKS OF ARTへ。ジェームズ・ウェリングの個展の最終日に間に合った。
ジェームズ・ウェリング(James Welling 1951~)はアメリカ・コネティカット州ハートフォード生まれ。カリフォルニア大学で学び、UCLAで教鞭をとっている写真家だが、作風はどこかヨーロッパ的だ。以前もカラー・フォトグラムや1920年代のノイエ・ザハリヒカイト風の作品を発表したりして、写真史を広く渉猟し、そのエッセンスを巧みに引用してくる。今回の「Notes on Color」のシリーズは、ジャンル的には建築写真ということになるだろうか。故郷のコネチカット州のフィリップ・ジョンソン邸というモダニズム建築を、きっちりと撮影している。ところが、画面の一部がカラー・フィルターでブルー、レッド、グリーンの三原色に処理されていたり、レンズのフレアによって虹のスペクトラムのような光が舞っていたりして、とても不思議な味わいの作品に仕上がっていた。
彼が何を考えているのか、作品からはよくわからないところがあるが、その画像処理のセンスのよさにはいつも感心してしまう。網膜を柔らかくマッサージしてくれる光と色の触感が、たまらなく気持ちがいいのだ。理屈抜きに(理屈はあるのだろうが)、それだけを愉しむだけでもいいような気がしてくる。別室に展示されていた、ネットのようなものをトルソに見立てたフォトグラム作品も、繊細な質感がうっとりするくらいに快い刺激を与えてくれる。

2009/03/14(土)(飯沢耕太郎)

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