artscapeレビュー

Naomi Pollock『HITOSHI ABE』

2009年04月15日号

発行所:Phaidon

発行日:2009年2月7日

ナオミ・ポロックによる阿部仁史のモノグラフ。作品は時系列順ではなく、形態別に整理されているところは作品集として異色だ。すなわちLine(線)、Surface(面)、Volume(立体)という三つのカテゴリーに分類される。建築における形態の問題を、追究し続ける阿部の作品集だからこそ、とても効果的である。それはサイズで作品を分類したレム・コールハース/OMAの『SMLXL』も想起させるだろう。仙台とカリフォルニアという二拠点を往復する阿部を追いかけつつ、ナオミ・ポロックは巻頭論文において、阿部のさまざまな私生活も含めた人間像に迫る。内容は彼女の本だとして任せ、唯一阿部がこだわった点は写真であり、使いたいと提案される写真の6割を差し替えたという。阿部の作品にはいわば「見慣れない」形態が入り込み、それがほかの日本の建築家と阿部を決定的に分けているように思う。日本とアメリカという二つのバックグラウンドがあることによって、阿部の作品は、単純さと複雑さ、透明なものと不透明なものなど、対立するものが同居することを許容する建築であるようにも思う。ところで、本作品集の出版記念イベントとして、阿部氏のトークイベントを収録し、その模様を「建築系ラジオr4」にて配信している。ぜひそちらもご参照いただきたい。阿部氏、ポロック氏に、五十嵐太郎、今村創平、筆者が話を伺っている。司会は堀口徹。

関連URL:http://tenplusone.inax.co.jp/radio/

2009/03/14(土)(松田達)

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