2019年08月01日号
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artscapeレビュー

HEAVEN 都築響一と巡る社会の窓から見たニッポン

2010年08月01日号

会期:2010/05/22~2010/07/19

広島市現代美術館[広島県]

編集者で写真家の都築響一の展覧会。『TOKYO STYLE』をはじめ、『ROADSIDE JAPAN─日本珍紀行』『巡礼~珍日本超老伝~』など、これまでの都築の活動を一挙に振り返る構成で、ちょうど一冊のスクラップブックのように編集された展覧会は、混沌としていてじつに楽しい。じっさい、出品された作品の大半は写真だったが、それらを解説する短いテキストが添えられていたから、観覧者はおのずと写真を「見る」というより、「読む」ように仕向けられていた。かつて井上雄彦が美術館を丸ごと漫画に見立てたように、おそらく都築は美術館を一冊の雑誌に仕立て上げようとしたのだろう。じっくり読み進めていくと、なるほど奇妙な物体や奇人の視覚的なインパクトを楽しむだけでなく、それらの背景にひそむ物語の一端を垣間見ることはできる。とはいえその一方で、それらの情報はあくまでも水平的であり、ある一定の水準以上に深まっていくことはないのも事実だ。秘宝館のエロティックなインスタレーションを制作した作り手の姿は展示から見えてこないし、今回の展覧会を象徴するイメージとして採用された広島在住のホームレス、広島太郎にしても、突っ込みが甘いといわざるをえない。公立美術館で発表することのさまざまな制約を差し引いたとしても、得体の知れない人や物を発見して、それらを世間に伝えたいという「熱」がさほど強く感じられなかったのは、いったいどういうことなのだろうか。すでにある程度のキャリアを積んでいる都築が、いつのまにか「型」に収まってしまったということなのか、それともそうした「熱」を必然的に冷ましてしまう美術館という文化装置に由来しているのか。正確なところは知るよしもないが、その「熱」を浴びたことのある読者としては「もっと見たい、もっと見せろ、もっとやれ!」と思わずにはいられない。

2010/07/09(金)(福住廉)

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