2019年08月01日号
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artscapeレビュー

細川護熙 展 市井の山居

2010年08月01日号

会期:2010/04/22~2010/07/19

メゾンエルメス8階フォーラム[東京都]

元首相・細川護熙の個展。会場を「市井の山居」として見立て、藤森照信の設計による草庵(茶室)を中心に、茶碗や壺、油絵、掛け軸、屏風などを随所にちりばめた。全体的に仏教的な世界観が通底しており、いかにも「和」の趣味性が強く醸し出されているが、どこかでちぐはぐな印象を禁じえないのは、珍妙きわまる油絵がてらいなく展示されているからだろう。この違和感が、稚拙な油彩の技術に由来していることはまちがいない。けれどもあえて深読みすれば、それは期せずして日本の伝統観を正確に反映しているようにも思えなくもない。熊本城や達磨、蓮といった「和」のイメージを、西洋伝来の油絵で描くことは、古来から連綿と継承されてきた伝統というより、むしろ西洋の文化や芸術を取り込みながら絶えず更新してきた伝統の様態を指し示しているからだ。細川があらわにしていたのは、日本の文化の底辺に構造化された、恥ずかしいキッチュである。どうあがいたところで、この宿命から逃れる術は、いまのところ、ない。

2010/06/24(木)(福住廉)

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