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美術に関するレビュー/プレビュー

瀬戸内国際芸術祭2013 春(沙弥島)

会期:2013/03/020~2013/04/021

瀬戸内海の12の島+高松・宇野[香川県]

女木島を後にして高松港へ。そこからバスで今回の島巡りツアーの最終目的地、坂出市にある沙弥島へ移動した。沙弥島は現在は埋め立てられて地続きになっているが、柿本人麻呂が詠んだ「万葉の島」としても知られる有名な島。神戸芸術工科大学の教授らによる、讃岐三白(かつて讃岐の三大産物とされた砂糖、綿、塩)の「白」をテーマにした作品が展示されている旧沙弥小中学校、藤本修三の《八人九脚》の設置された場所からは瀬戸大橋も一望できる。五十嵐靖晃の《そらあみ》は沙弥、瀬居、与島、岩黒、櫃石の5島の漁師の人々と協力して紡いだという大きな漁網。使われた赤、白、黄、黒、青の色が見る角度や光によっても見え方が異なり、さまざまな表情が楽しめる。その様子や網の向こう側に見える瀬戸内海も美しいのだが、近づいて見ると編み方にも個性がうかがえて微笑ましい。《そらあみ》のすぐ近くでは「EAT&ART TARO」による地元の食材を使った「島スープ」が提供されている。千年も前から沙弥島の人たちに食されてきたというカメノテという貝の入った《千年スープ》はぜひ味わってみてほしい一品だ。春期はまもなく終了するが、島の歴史文化や人々の生活に思いの巡る作品で彩られた沙弥島は、陸続きなので他の島よりも気軽に足を運ぶことができそう。


藤本修三《八人九脚》と瀬戸大橋の風景


五十嵐靖晃《そらあみ》

2013/03/21(木)(酒井千穂)

瀬戸内国際芸術祭2013 春(女木島)

会期:2013/03/020~2013/04/021

瀬戸内海の12の島+高松・宇野[香川県]

犬島から女木島に渡る。乗船時間は1時間弱。到着した女木港からの穏やかな海の眺めがまず素晴らしい。堤防沿いにずらりと並ぶ木村崇人の風見鶏《カモメの駐車場》の近くで昼食をとり、現在休校中の女木小学校に移動。この中庭に、女木島の展示のメインでもある大竹伸朗の《女根/めこん》が設置されている。島に自生するヤシとブイを合体させたその異様なヴィジュアルや雰囲気に目を奪われてしまうが、よく見ると作品の周囲に生えている木やさまざまな草花もエネルギッシュでたくましいあり様。また違う季節にも見てみたい小さな植物園のようなスペースだった。愛知県立芸術大学が活動拠点する「MEGI HOUSE」ではピアノコンサートも催されていた。私は聴けなかったが、午後からは快晴のうえ、ぽかぽか陽気だったのできっといっそう贅沢なひとときになっただろう。女木島ではほかに、図書室とレストランを併設した建物に展示されたアルゼンチン生まれのレアンドロ・エルリッヒの作品、陶のブロックを積み上げて設置された杉浦康益の《段々の風》なども見てまわった。ちなみに個人的な話だが、女木島では港からも近い郵便局を訪ね、ただ一人の局員さんに女木島局の風景印を押印してもらって少し会話を交わした。芸術祭は開催地のほとんどが離島というだけに、限られた滞在時間では、展示作品を見てまわることばかりに夢中になってしまいそうだが、せっかくなのでアートとともにその土地の魅力にもできるだけ触れたいものだ。それが地元の人との出会いも楽しめる機会になったらなお素敵だ。私も、束の間の時間だったが持ち帰った女木島郵便局の風景印を見る度に、親切に接して下さったその局員さんを思い出す。忘れ難い良い思い出。


木村崇人《カモメの駐車場》

2013/03/21(木)(酒井千穂)

瀬戸内国際芸術祭2013 春(犬島)

会期:2013/03/020~2013/04/021

瀬戸内海の12の島+高松・宇野[香川県]

雨が止み、快晴に向かったのも嬉しかった瀬戸内国際芸術祭の島巡りツアー2日目。朝8時30分発の船で直島から犬島へ渡った。乗船時間は約1時間。やや駆け足気味だったが、到着してから五つの「家プロジェクト」作品を鑑賞した。透明アクリルの円形の構造物に張り合わせた造花の花びらを展示した《A邸/リフレクトゥ》、壁面に大小さまざまな円形レンズを取り付けた《S邸/コンタクトレンズ》、民家をリノベーションした建物で制作された名和晃平の大作《F邸/Biota (Fauna/Flora)》と見てまわる。前田征紀によるI邸のサウンドインスタレーションは外に広がるのどかな景色、光と水の揺らめきが美しく、できれば静かにゆっくりと堪能したい作品であった。インドネシア出身のアーティスト、フィオナ・タンによる犬島の石切り場と瀬戸内の海を背景にした映像インスタレーション《Cloud Island I》も面白い。犬島には、道端のところどころにSANAA設計の《ラビットチェア》が設置されているのだが、案内してくださった方によると、もともと《中の谷東屋》に置かれたこの椅子は、通りかかるたびに移動しているとのこと。地元の人たちにも親しまれる場となっていることがうかがえる微笑ましいエピソードでそんな場面を想像するのも楽しかった。

2013/03/21(木)(酒井千穂)

プレビュー:FESTART OSAKA 2013

会期:2013/04/08~2013/04/20

ギャラリー白、瀧川画廊、アートサロン山木、番画廊、Yoshimi Arts、コウイチ・ファインアーツ、Port Gallery T、ギャラリープチフォルム、美術處 米田春香堂、美工画廊、ギャラリー新居、山木美術、谷松屋戸田ギャラリー、アート・遊、ギャラリー風、画廊大千、ワタナベファインアートギャラリー、とりゐや美術店、Nii Fine Arts、福住画廊[大阪府]

大阪市の西天満、北浜、淀屋橋、肥後橋という隣接する4エリアの20画廊が、足並みを揃えて展覧会を開催。トークショーやパーティー、ギャラリーツアーなどの関連イベントも多数開催される。いわゆるニューカマー向けの啓蒙イベントだが、画廊の取り扱い分野が現代美術、近代美術、工芸と幅広いため、美術通にとっても慣れないジャンルの画廊に足を運ぶチャンスとなる。観客と画廊の関係をシャッフルすることで、新たな出会いが生まれることを期待する。

2013/03/20(水)(小吹隆文)

瀬戸内国際芸術祭2013 春(直島)

会期:2013/03/020~2013/04/021

瀬戸内海の12の島+高松・宇野[香川県]

多くの人が訪れて大盛況を博した2010年の1回目の開催からはや3年。瀬戸内海の島々を舞台にした現代美術の祭典「瀬戸内国際芸術祭」の2回目が開幕した。23の国と地域、約210組のアーティストが参加し、12の島々と高松、宇野を舞台に開催される今回は、会期も春、夏、秋の3シーズンに分かれていて前回を上回るスケール。高松港で開会式が行なわれた初日は、あいにくの雨でとても寒かったのだが、式終了後に直島に渡り、ベネッセハウス ミュージアムの国吉康雄展と、家プロジェクト「南寺」の近くにオープンした「ANDO MUSEUM」を訪れることができた。築100年以上の木造民家を改築した「ANDO MUSEUM」は、外観は古民家の趣きを残したまま、内部をコンクリートの空間で仕上げたいかにも“安藤建築”らしい建物。館内では、これまで直島でいくつもの美術館施設に携わってきた安藤忠雄の一連のプロジェクトがスケッチや模型によって紹介されている。この日はずっと天気が悪かったので、館内はだいぶ薄暗かったのだが、もっと明るい日差しのあるときに訪れたなら中庭から射し込む光が届く地下空間の趣きもより美しく感じられそうだ。この日は、同じ本村地区の東部公民館とその前の広場では地元の人々による春祭りも開催されており、広場では飲食物の露店も並び、雨のなか訪れる人々で賑わっていた。夕方には公民館で直島の芸能を披露する催しもあったのだが、残念ながらそれは見ることができなかった1日目。

2013/03/20(水・祝)(酒井千穂)