2019年12月01日号
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artscapeレビュー

山田郁予 展「絶対、一生、金輪際」

2011年05月01日号

会期:2011/03/30~2011/04/30

Mizuma Action[東京都]

「こっち見んな」というフレーズが記憶に新しい、山田郁予の新作展。高橋コレクションでの個展「いいわけ」(2009)と同様、トレーシングペーパーを張り合わせた巨大な画面にパステルなどで少女を描いた平面作品を展示した。触れた瞬間に一気に崩壊するような、脆くも儚い感性が大きな特徴であることに変わりはない。ただ、今回の目玉は山田自身が出演した映像作品。いわゆる「自作自演」の短編映像をあわせて1時間にも及ぶ作品に編集した。ラジオ番組のDJやアイドルのイメージビデオなどの設定を借りて演出された映像に一貫していたのは、山田自身がみずからの美しさを大々的に画面に露出させたこと。ともすれば大きな反感を買いかねないことは重々承知しているのだろうが、伝家の宝刀を抜いた心意気は潔い。自己隠蔽と自己露出の矛盾を突き詰めるコンセプトも明快だ。しかしその反面、細部の綻びが気にならないわけではなかった。映像作品の出来不出来に極端なバラつきがあるばかりか、全体の尺も長すぎで、音声もやたら聞き取りにくい。壁一面に張り出された箴言のような言葉の数々が卓越した言語感覚を実証していただけに、映像の稚拙さが際立っていたのかもしれない。あるいは、このように他者をあえて遠ざけることによって、今回の自己露出に見合う程度に「こっち見んな」というメッセージを強調しようとしたとも考えられる。だがしかし、みずからのヴィジュアル・イメージを見せることを決断した以上、いまさら孤絶感を担保することは、文字どおり中途半端な「いいわけ」という印象を与えかねない。東村アキ子のマンガ『主に泣いてます』が鋭く描き出しているように、美人の悲喜劇は固く閉ざされた殻を打ち破り、さまざまな人間関係に翻弄されるようになってはじめて語られるものだからだ。

2011/04/12(火)(福住廉)

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