2019年09月15日号
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artscapeレビュー

シュウゾウ・アヅチ・ガリバー EX-SIGN展

2010年05月01日号

会期:2010/02/27~2010/04/11

滋賀県立近代美術館[滋賀県]

「ガリバー」こと、安土修三の大規模な回顧展。高校在学中に発表されたハプニング《草地》のイメージ・ドローイングからフーテンの名士としてマスコミをにぎわせた60年代末に製作された個人映画、自分の死後の肉体を80分割にして80人にそれぞれの部位を保管させる契約を結ぶ《Body Contract》、自分の体重と同じ重さのステンレススチールの球体《重量(人間ボール)》、そして「立つ」「座る」「寝る」というそれぞれの姿勢にあわせて密閉された箱のなかで240時間を過ごす《De-Story》など、ガリバーのこれまでの制作活動を一挙に振り返る構成になっている。一見して明らかなのは、現在のアートの傾向を先取りした先駆性はもちろん、みずからの肉体への並々ならぬ関心である。そこに一貫しているのは、おそらく「わたし」の根拠としての肉体を凝視するナルシスティックな視線というより、むしろ自分の肉体を物体として徹底的に客観視することによって逆説的に「わたし」を浮き彫りにする方法的な手続きである。本来、土に返るはずの肉体を焼却や腐敗から免れる反自然的な物体として保存させる《Body Contract》は、そのことによって「ガリバー」という「わたし」を自然の摂理から切り離すかたちで浮上させるが、その「わたし」はまるで時空を超越して価値を発揮する芸術作品のようだ。芸術作品を作り出すアーティストとしての「ガリバー」にとどまらず、「ガリバー」そのものを芸術作品としてしまう、きわめて野心的かつコンセプチュアルな作品である。

2010/03/26(金)(福住廉)

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