artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
高橋耕平「HARADA-san」
会期:2013/12/06~2013/12/27
ギャラリー・パルク[京都府]
一見、客観的な資料性の高い年表のようなものにも制作意図はもちろんあって、掲載される項目の取捨選択は必須。純粋な中立な視点に立ったドキュメンタリーなど存在しないわけで。本展でも高橋の取材のもと、「原田さん」という人物が生まれてからいままでの年表と映像が制作されているが、どうも編集意図が見当たらない、とても読みづらいものになっていた。訊くと「事実だけど演劇のようなもの」として見せるための意図的な未編集なのだという。しかしそこにも制作意図は入ってしまう。情報のなかにまぎれて記される「原田はその意見には反対であったらしい」といった高橋のイタズラ心を垣間みたときに作品の奥深さを知る。それにしても映像の冒頭のシーンのフレーミングは美しかった。
2013/12/27(金)(松永大地)
1925 QUAND L’ART DECO S’EDUIT LE MODE(1925年、アールデコが世界を魅了した時)
会期:2013/10/16~2014/02/17
国立建築遺産博物館[フランス・パリ]
建築博物館のアール・デコの企画展を見る。各ジャンルから見るアール・デコへの芽生え、1925年の万博、そして日本や中国も含む、各国への伝播とビルディングタイプ別に影響を検証したもの。アール・デコの摩天楼で知られるアメリカのニューヨークの扱いは、わずかなのが興味深い。
2013/12/26(木)(五十嵐太郎)
ルーヴル美術館 イスラム美術展示室
[フランス・パリ]
ルーヴル美術館に訪れるのは、十数年ぶりだろうか。マリオ・ベッリーニとルディ・リッチオッティが設計し、新しい空間が生まれたイスラムの展示エリアを見るために足を運んだ。中庭に挿入されたやわらかな皮膜としての屋根である。ルーヴルは、イスラムやアフリカなど、絵画以外の展示デザインが素晴らしく、ほとんどインスタレーションのレベルになっていることに感心した。
2013/12/26(木)(五十嵐太郎)
フクシマへ門を開く─福島第一原発観光地化計画展2013
会期:2013/12/24~2013/12/28
第1会場ゲンロンカフェ、第2会場ゲンロンオフィス[東京都]
福島第一原発観光地化計画展2013を見るために、初めてゲンロンカフェを訪れた。五反田らしい雑居ビルの屋内で、世界地図の中で福島への軸線を示す床の上にふくしまゲートヴィレッジの模型、梅沢和木によるツナミの塔とその前身となる作品アキハバラ3000、新津保の写真など、所狭しと作品が並ぶ。思想が核となり、美術、建築、映像、写真の分野を横断する展。詩人がテクノロジーに可能性を見出す未来派宣言を行ない、絵画、彫刻、音楽、建築などが未来派を展開したことを思い出す。言葉と美術が前のめりのアヴァンギャルドに対し、建築は少しクラシックな軸線を入れるのも、サンテリア的か。いったん外へ出た、第2会場のゲンロンオフィスでは、ゲートヴィレッジを、窓から見下ろすホテルの一室に見立て、原発麻雀化計画の卓と梅沢の絵を置く。梅沢の絵は、写真で見るより、実物の方がテクスチャーが感じられて好印象だった。藤村龍至のふくしまゲートヴィレッジは、メンバーのアイデアを集合させながら、再編成したもので、丹下・メタボリズム的なアーバニズムと、現代のショッピングモール的商業・観光を融合している。中国ならすぐにできそう。また事故博物館の造形は、神社を下敷きとし、棟の千木と鰹木を超線形プロセスで設計していた。
2013/12/24(火)(五十嵐太郎)
篠原有司男・篠原乃り子二人展「愛の雄叫び東京篇」
会期:2013/12/13~2014/01/13
パルコミュージアム[東京都]
80歳を超えたニューヨーク在住の“前衛芸術家”篠原有司男ことギューちゃんと、20歳ほど年下の乃り子の結婚生活を描いたドキュメンタリー映画『キューティー&ボクサー』の公開記念展。ゲストキュレーターはニューヨーク在住の美術史家、富井玲子さん。乃り子の絵は初めて見るが、色彩はないけどマンガチックな線描はさすがギューちゃんのパートナーというか、パートナーになったからこういう絵になったのか。会場の1室はロールキャンヴァスに描いた全長20メートルはありそうな超大作に占められていて、これは彼女自身の悲喜こもごもの半生を表わした絵巻。ギューちゃんのほうは相変わらずギンギラギンに輝いている。「ボクシング・ペインティング」も2点ほど出ているが、パンチが当たった部分を花、絵具が滴り落ちる垂直線を茎と見立てれば、みごとな「燕子花図屏風」になる。欲をいえば、もっと大きな美術館で、もっとたくさん作品を見たかった。
2013/12/24(火)(村田真)