artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

キューバ現代美術作家(アベル・バロッソ「タッチパネル電話展」+サンドラ・ラモス「現代の神話展」)

会期:2013/12/12~2013/12/24

プロモ・アルテ[東京都]

キューバ美術研究家の正木基氏が企画したアベル・バロッソとサンドラ・ラモスの2人展。おもしろかったのがアベル・バロッソの「タッチパネル電話」。スマホをはじめとする電子機器を木でつくったり、木製のロボットに入ってアシモと共演したりしているのだ。こういうアホがいるとうれしくなる。キューバもなかなか捨てたものでもない。

2013/12/24(火)(村田真)

キリコ「re collection」

会期:2013/12/10~2014/12/25

Port Gallery T[大阪府]

「旦那 is ニート」(2010)、「オーディション」(2011)と、キリコは自らのなまなましい実体験を写真化することで辿り直し、新たな認識を育てていくことを目指す作品を発表してきた。4年前からは、京都で売れっ子の芸妓だったという祖母を撮影し、彼女から聞き書きしたエピソードとともに再構成するという試みを開始した。今回の「re collection」は、2012年に同じギャラリーで発表した「見世出し」の続編と言うべき作品だが、新たな方向性をはっきりと感じることができた。
今回は祖母が語る生涯の代表的なエピソードを、「choice」「 love」「game」「value」「survival」という5つの章に分類し、それぞれに対応する作品を展示している。しかも、祖母が好きな色だというピンクがかった紫色に染めた水を箱に詰めて、その上部に仕込んだ写真とテキストを鏡で映し出すという、凝った仕掛けを導入した。水とその表面を覆うオイルの層を通して、ゆらゆらと写真とテキストが浮かび上がってくる様は、まさに記憶の揺らぎの中に分け入っていくような感触を備えている。単なるトリックに終わることなく、彼女の制作意図がしっかりと伝わってくる、とてもいいインスタレーションになっていたと思う。
祖母をテーマにした作品は、これから先もしばらくは続くようだ。今回のような「現代美術寄り」の作品も悪くないが、オーソドックスなドキュメンタリー写真として成立していく可能性も感じる。あまり方法論を固定せずに、いろいろなやり方を模索していってほしいものだ。

2013/12/23(月)(飯沢耕太郎)

磯崎新 都市ソラリス

NTTインターコミュニケーション・センター(ICC)ギャラリーA[東京都]

会期:[第一期]2013/12/14~2014/01/13
 [第二期]2014/01/15~02/08
 [第三期]2014/02/11~03/02
ICCの磯崎新「都市ソラリス」展へ。内容は、1960年代から2010年代までの半世紀にわたる都市への思考と実践の軌跡を紹介するもの。ICCとしては海市から約15年後の区切りにあたる。現在のプロジェクトが、中国に集中していることがよくわかる。またコンピュータ・エイデッド・シティや都庁舎のコンペ案など、木の模型が本当に劣化せず、きちんと残るものだと改めて感心した。磯崎新、高山明、宮本隆司らと、ソラリス展のトークセッション「都庁」に出演する。戦後、モダニズムは民主主義の建築となり、丹下は水平のピロティ型を確立、佐藤武夫は垂直の塔型という庁舎のプロトタイプを提出するが、新都庁において、丹下はポストモダンの双塔に変わったのに対し、磯崎案は斜めのネットワークをもち、大きな広場空間を内包したと言えるのではないか。

2013/12/21(土)(五十嵐太郎)

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六本木クロッシング2013展:アウト・オブ・ダウト─来るべき風景のために

会期:2013/09/21~2014/01/13

森美術館[東京都]

森美術館「六本木クロッシング2013」展は、震災以降も意識した社会派のアートを集めたということで、あいちトリエンナーレ2013との比較も可能だが、下道基行、丹羽良徳、金氏徹平、大友良英らの重複を除き、だいぶ違うセレクションになっている。これは美術の多様性を示すだろう。セレクションでは、在外の日系アーティストが多いのが興味深い。ただし、それぞれの作品の解説文が少しわかりにくいのが、気になった。

2013/12/21(土)(五十嵐太郎)

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ダイチュウショー

会期:2013/12/21~2013/12/28

府中市美術館市民ギャラリー+ループホール[東京都]

20世紀美術最大の冒険といってもいい「抽象」も、いまや絶滅危惧種に指定されそうなマイナスの勢いだ。いったい抽象はどこへ行ってしまったのか、みたいなグループ展。O JUNをはじめ荻野僚介、門田光雅、木村俊幸、佐藤万絵子、椎木静寧、末永史尚、五月女哲平、玉井健司ら20人が、美術館とギャラリーの2会場で発表している。しかしいわゆる抽象画ばかりとは限らず、具象イメージもあれば写真もインスタレーションもあり、もはや抽象も具象もないだろみたいな声が聞こえてくる。それにしてもいったい絵画はこれからどこへ向かっていくというのか。

2013/12/21(土)(村田真)