2020年07月01日号
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artscapeレビュー

キリコ「re collection」

2014年01月15日号

会期:2013/12/10~2014/12/25

Port Gallery T[大阪府]

「旦那 is ニート」(2010)、「オーディション」(2011)と、キリコは自らのなまなましい実体験を写真化することで辿り直し、新たな認識を育てていくことを目指す作品を発表してきた。4年前からは、京都で売れっ子の芸妓だったという祖母を撮影し、彼女から聞き書きしたエピソードとともに再構成するという試みを開始した。今回の「re collection」は、2012年に同じギャラリーで発表した「見世出し」の続編と言うべき作品だが、新たな方向性をはっきりと感じることができた。
今回は祖母が語る生涯の代表的なエピソードを、「choice」「 love」「game」「value」「survival」という5つの章に分類し、それぞれに対応する作品を展示している。しかも、祖母が好きな色だというピンクがかった紫色に染めた水を箱に詰めて、その上部に仕込んだ写真とテキストを鏡で映し出すという、凝った仕掛けを導入した。水とその表面を覆うオイルの層を通して、ゆらゆらと写真とテキストが浮かび上がってくる様は、まさに記憶の揺らぎの中に分け入っていくような感触を備えている。単なるトリックに終わることなく、彼女の制作意図がしっかりと伝わってくる、とてもいいインスタレーションになっていたと思う。
祖母をテーマにした作品は、これから先もしばらくは続くようだ。今回のような「現代美術寄り」の作品も悪くないが、オーソドックスなドキュメンタリー写真として成立していく可能性も感じる。あまり方法論を固定せずに、いろいろなやり方を模索していってほしいものだ。

2013/12/23(月)(飯沢耕太郎)

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