2022年12月01日号
次回12月15日更新予定

artscapeレビュー

2011年07月01日号のレビュー/プレビュー

ポップ?ポップ!ポップ♡
コレクションに見るポップなアートの50年

会期:2011/04/29~2011/06/19

和歌山県立近代美術館[和歌山県]

ポップ・アートの代表作や、その影響が感じられる現代の作品など100点以上を展覧。2000年代以降の作品のなかには、「これをポップ・アートの文脈に入れてもいいの?」と疑問に思うものもあったが、そこは寛容に解釈することにした(タイトルに「ポップなアート」と記されているのは、そのためか?)。和歌山近美は関西の美術館のなかでも屈指の常設展示室を持っているが、コレクションも同様に質が高い。中途半端な企画展よりも見応えのある展覧会だった。

2011/06/04(土)(小吹隆文)

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村山幸子の世界

会期:2011/06/07~2011/06/12

ギャラリーマロニエ[京都府]

画廊の3階から5階を使った大規模な個展。還暦を迎えた作家にとって、集大成的な意味合いを持つ。5階では古着や端切れなどを用いた大規模なインスタレーションを展開(画像)。4階では1980年代に制作した、さまざまな素材でつくられたコスチュームを、実物と写真で紹介。3階は一転してひょうきんな張り子が並んでいた。あまりにも作風が違う張り子はともかく、5階と4階は見応えたっぷり。画廊メインで活動する作家は過去作品を振り返る機会が少ないので、貴重な機会と言える。ほかのベテランにも是非真似をしてほしい。

2011/06/07(火)(小吹隆文)

武田晋一のアプローチ

会期:2011/05/14~2011/06/07

space_inframince[大阪府]

今回、大阪のspace_inframinceにおいて武田晋一が発表したのは、店舗で使われていた什器や木箱、安価な合板などを利用したディスプレイ棚や椅子、オブジェなのだが、どうもそれらには家具やデザイン、あるいはオブジェという言葉がしっくりこない。作品のいくつかは家具として立派に機能しているので、美術にカテゴライズするのも戸惑いがある。
あえて家具作品として武田の作品をみるなら、それは少なくとも製品として褒められたものではないだろう。木箱の表面やエッジは何ら処理を施されず、むき出しのままだ。ディスプレイ棚はパーツを組み立ててつくられるが、通常の組み立て家具のように、パーツ同士はぴったりと合わさらない。それは、積み上げられた丸い石のように、箱や板がぎりぎりのバランスを保って積み重なっている。パーツは、武田自身が背負って会場に運んだものであり、彼はゆっくりと一個一個のパーツを並べ、積み重ねていく。Youtubeにアップされた動画をみると、何度もパーツを並べ直す武田の姿がみえる。つまりこれは、初めから組み立て方が決まっているわけではなく、組み立てる度にいちいちバランスを考えなければならない家具(?)なのだ。
武田はフランスに長く滞在したが、フランス語で家具は、「meuble」「mobilier」といい、どちらも「動く」という意味を含む。実際、戦争の絶えない中世の時代、タピスリーや椅子、櫃などの家具は次の戦地に赴く度に動かされるものだった。したがって、パーツにばらして持ち運びができ、組み立ての度に姿を変容させる武田の家具は、家具の原点回帰ととれないこともない。
このような歴史的背景と武田の作品に関わりがあるかどうかは不明だが、「動く」要素がこの家具を特徴づけることは確かだ。ばらばらのパーツは、人間がその時々の用途に応じて勝手につくり出し、不要となるや捨てられたものである。会期中にそれらは何度も組み変えられ、外観を変える。その変容は武田によりもたらされるとはいえ、逆に、パーツたちが武田という主に向かって生き物のごとく振る舞い、崩れないように安定を図ろうとする武田に歯向かうかのようでもある。同様に、黄色い輪郭線でできた椅子も、主(=人間)が座れない椅子だ。蝶番のついた輪郭線は、自らを変形することで、椅子のイメージであり続けることさえも拒絶するだろう。このように武田の家具を生けるものとしてみることは無論、筆者の空想以外の何物でもない。だがこの空想が、日常を取り巻くモノと人間との対峙を思いがけない視座から照射しようとする武田の企てによって生み出されたものであることは確かなのだ。[橋本啓子]

Takeda Shinichi's Approach (14 May 2011)

2011/06/07(火)(SYNK)

舩井裕 回顧展

会期:2011/06/07~2011/06/25

アートコートギャラリー[大阪府]

昨年6月に逝去した舩井裕。本展では彼の代表作である版画の連作やコラージュ作品、50数年ぶりに公開された油彩画など、約150点が展示された。洗練とユーモアをたたえた版画の連作はもちろんだが、ビニールシート、麻袋、板などをキャンパスに貼り付けて一部を焦がしたコラージュ作品も、圧倒的な存在感があって素晴らしい。画廊での展覧会にしては珍しい全64ページの図録も、秀逸な出来栄えだった。

2011/06/08(水)(小吹隆文)

オフセット印刷で探るグラフィック表現の可能性──グラフィックトライアル2011

会期:2011/05/13~2011/08/07

印刷博物館P&Pギャラリー[東京都]

オフセット印刷ではなにが可能なのか。どのような限界があるのか。ふだんの仕事では絶対に経験不可能な、極端に実験的な試みをほんとうにやってしまうのが、グラフィックトライアル。なによりも、これらの実験過程がすべて記録されている点がこの企画の最大の意義である。今年は祖父江慎、佐藤可士和、名久井直子、山本剛久の四氏がそれぞれ課題を出し、凸版印刷のプリンティング・ディレクターが苦心惨憺の果て(?)にそれらを実現する。祖父江慎氏はあえて正確なコントロールができないであろう要素を印刷に持ち込む。メディウムにカレー粉を混ぜて刷ったり、フィルムをたわしでこすって傷つけたり。それでも意外にも予測不能なトラブルは起きにくく、現代印刷技術の安定性を確認することになったそうだ。佐藤可士和氏は、オフセット印刷の限界を見極め、基準をつくるという課題。同じ色を100回刷り重ねたらどのような効果が得られるのか。細い罫線、小さな文字は、どこまで再現可能なのか。インキメーカーによって金、銀、黒の色味や効果にどれほどの違いがあるのか。名久井氏は大正から昭和初期にかけて刊行された絵本のような、懐かしい印刷効果の再現を試み、山本氏は色ごとに用意した版を重ね刷りすることによって木版画のような効果を再現する。課題の選び方にそれぞれのデザイナーの個性、関心が現われていてとても面白い。オフセット印刷は私たちにとってもっとも身近で見慣れた印刷方法であるが、これほどまでに圧倒的な質感が表現可能であるのかと驚かされる。[新川徳彦]

2011/06/08(水)(SYNK)

2011年07月01日号の
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