artscapeレビュー
2017年12月01日号のレビュー/プレビュー
プレビュー:世界のブックデザイン2016-17 feat.21世紀チェコのブックデザイン
会期:2017/12/01~2018/03/04
印刷博物館P&Pギャラリー[東京都]
サイト:http://www.printing-museum.org/index.html
2017年3月に開催された「世界で最も美しい本コンクール」の入選図書に加え、日本、ドイツ、オランダ、スイス、カナダ、中国、チェコの7カ国のブックデザインコンクール入賞図書作品、約200点が展示される。「日本におけるチェコ文化年2017」にあたる今年は、21世紀チェコのブックデザインに焦点を当てた特別コーナーが設けられるという。例年同様に会場では図書を手にとってその装幀と造本をじっくり見ることができる。できれば会期初頭に1回、そして作品が多くの人々の手に触れたあとの会期末にもう一度訪れて造本状態の変化を比較してみたい。[新川徳彦]
関連レビュー
世界のブックデザイン2015-16 feat.造本装幀コンクール50回記念展|SYNK(新川徳彦):artscapeレビュー
2017/11/24(金)2017/11/24(金)(SYNK)
纏う図案──近代京都と染織図案I
会期:2017/09/25~2017/11/02
京都工芸繊維大学美術工芸資料館[京都府]
京都の伝統産業と言えば、着物──京友禅や西陣織──がすぐさま思い浮かぶ。本展は、明治期に成立した「図案」という概念をキーワードに、当時の染織品にみるデザインの発展と、それを支えたデザイン教育の教材や学生が制作した図案等を紹介する。明治時代の京都では、多くの図案集が刊行された。新しい意匠を作り出して産業振興に資するよう、業界団体や百貨店が懸賞付きの図案募集を行なった。出展品には、いち早く募集を開始した友禅図案会(後の友禅協会)に応募された図案が多く、明治25年から44年までに渡る期間の図案の変化や流行を見ることができる。自然をモチーフにした絵画的な写実性ある模様から、過去の模様を折衷し組み合わせたもの、幾何学的構成や配置の妙に優れるもの、意匠化がはっきりとわかるものまで、色と形さまざまな図案が目を楽しませてくれる。面白いのは、伝統的な古代模様と、海外のアール・ヌーヴォーの影響を受けた図案の二つの流れが教育資料に看取できること。京都市立美術工芸学校(現:京都市立芸術大学)と京都高等工芸学校(現:京都工芸繊維大学)の教育の特色の違いを、学生の作品に見ることができる。また何よりも、学生が丹精込めた作品が伝達する、若さ溢れる熱意に心を打たれる。[竹内有子]
2017/11/2(木)(SYNK)
「福を運ぶ朝鮮王朝のとりたち」展
会期:2017/07/27~2017/12/05
高麗美術館[京都府]
酉年の2017年も間もなく終わり。本展はそんな今年を振り返って、日々の生活にある小さな幸福をかみしめるに適した展覧会である。出展されるのは、朝鮮王朝時代の人々の暮らしに根差した工芸品およそ80点。民画、屏風、青磁の器、水滴や硯、染付の壺等のなかに表われる鳥の表現は多様でありながら、そのどれもがのびやかな形象とポジティヴなイメージを見る者に伝える。例えば、《刺繍花鳥図屏風》のように四季の花々とともにいる鳥たちはたいがい「つがい」となっていて、家庭内の平和や愛情を象徴している。一方、花は人生を表わすものとして尊ばれ、とくに華麗な牡丹は富貴を象徴することで知られる。また、柳宗悦が名付けた「民衆的絵画」こと「民画」は、いわゆるアカデミックな技法に捉われない自由奔放さ、素朴さやユニークな表現が魅力である。《三災消図》に表われる鷹の姿は、勇壮でありつつも、それこそ災いを取り払ってくれるようデフォルメされた大きな足の表現が面白い。息災を遠ざけて吉祥をもたらす鳥たちは、かように人々の幸せを願って作られた、福のシンボルなのである。当時の工芸品に込められた願いが、時を超えて私たちに幸福を運んでくれるようだ。[竹内有子]
2017/11/4(土)(SYNK)