artscapeレビュー
2009年04月01日号のレビュー/プレビュー
田中功起 シンプルなジェスチャーに場当たりなスカルプチャー
会期:2009/02/21~2009/03/21
青山|目黒[東京都]
田中功起の新作展。映像作品は従来よりコンパクトに編集され、ショートコントのようだった。お笑いばかりか、アートも映画も小説も、そして批評も、簡潔に手短にまとめられる現在の趨勢にたいするアイロニーのように見えた。
2009/02/25(水)(福住廉)
平成20年度第32回東京五美術大学連合卒業・修了制作展
会期:2009/02/19~2009/03/01
国立新美術館[東京都]
毎年恒例の五美大展。昨年は女子美の圧勝だったけれど、今年はムサビと造形大が拮抗していたように思う。ムサビの場合、ミッキーの彫像のおしりに火をつけた大成乗治の映像作品や、千円札で消費したモノとその紙幣番号を控えたドキュメントを一挙に公開した阿部浩之、切り干し大根の工場などを撮影した仲山姉妹、あるいは美大生による社会性を欠いた美術活動を「グルーミング・アート」と名づけてその実態を克明に分析した小さな雑誌を発表した田村陽菜などが際立っていた。造形大では、おさげ姿の自分の顔などをモチーフにした穴村崇による不気味なCG作品、「半馬博物館」なる架空のミュージアムの所蔵品を公開した太田祐司などが突出していた。
2009/02/25(水)(福住廉)
ヴィック・ムニーズ 「ビューティフル・アース」展
会期:2008/11/22~2009/03/01
トーキョーワンダーサイト渋谷[東京都]
とにかくやたらとスケールがでかい。ゴミ処理場のゴミを整然と配置することで、そこで働く人びとのポートレイトを描き出した写真作品や飛行機雲で描いたドローイング、開墾した大地にブルドーザーで描いたランドアートなど、写真に落とし込んで見せているものの、プロジェクトのダイナミックな運動性は失われていない。それらが現在の環境問題を下敷きにしていることは明らかだが、安手のヒューマニズムに回収される恐れがないくらい、見事に振り切っているところが潔い。だからこそ、展覧会の反語的なタイトルが効いているのだろう。
2009/02/26(木)(福住廉)
福島の新世代2009 CLOSE TO YOU ! ──もっと近くに
会期:2009/01/10~2009/03/01
福島県立美術館[福島県]
福島県にゆかりのある美術家を紹介するシリーズ展の4回目。今回は抽象絵画の宇田義久、写真によるインスタレーションを発表した金暎淑、プロジェクトのドキュメントとそれらにもとづくインスタレーションを発表したKOSUGE1-16が参加した。とくにテーマも設けず、三者三様の表現を集めたところは潔くてよい。なかでもひときわ際立っていたのが、百日間にわたって毎日催した自分の葬儀を写真に撮影し続けたキムヨンスク。昨日の遺影を胸元に置いたポートレイトは、翌日のポートレイトでは遺影となる。日々「死」を繰り返しながら「生」を持ちこたえてゆく、ある種の脆さやはかなさが、同時代的なリアリティを獲得しているように見えた。
2009/03/01(日)(福住廉)
唐仁原希 展
会期:2009/03/02~2009/03/07
番画廊[大阪府]
少女と鹿が合体した半獣半身のバンビーノ(美少女)たちの絵。果樹にたわわに実る果実が皆少女の顔をしている絵。カタツムリになった少女の絵。ミッフィーやハローキティを思わせる色使いで表現された口のない少女たちの絵。唐仁原が描く少女たちは皆、どこか窮屈な姿をしている。自身の内面に宿る少女性への憧憬と嫌悪がこのような形で表出するらしい。彼女は今春大学を出たばかり。伸びシロたっぷりなので、今後が楽しみだ。
2009/03/02(月)(小吹隆文)