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2009年04月01日号のレビュー/プレビュー

千家十職×みんぱく

会期:2009/03/12~2009/06/02

国立民族学博物館[大阪府]

千家十職とは、茶事全般の道具(茶碗、窯、表具、指物など)を作って来た十の家のこと。300年から400年を超える歴史を持ち、当代で11代から17代を数える。本展では、彼ら十職が作り出してきた名品の展示に始まり、十職の目で選ばれたみんぱく(国立民族学博物館)収蔵品と、収蔵品にインスパイアされた十職の新作との共演、みんぱく側が十職の仕事を10の動詞に当てはめ、その分類に応じてセレクトした収蔵品展示が行なわれた。アルチザンとアカデミズムのコラボレーションとでもいうべき異色企画だが、収蔵品に新たな価値を与える手法としてとても斬新だ。

2009/03/12(木)(小吹隆文)

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多摩美術大学工芸学科第八期生卒業制作展 さよなら工芸

会期:2009/03/11~2009/03/15

BankART Studio NYK[神奈川県]

多摩美の工芸学科による卒業制作展。展覧会のタイトルが「母校への別れ」と「ジャンルとしての工芸への決別」を含意していることは明らかだが、勇ましい言葉に負けず劣らず、それぞれの作品も全体的にレベルが高く、見応えがあった。工芸的な完成度を踏まえつつも、その規範には決して満足しない志の高さが伺えた。

2009/03/13(金)(福住廉)

多摩美術大学大学院美術研究科デザイン専攻情報デザイン領域有志学外展

会期:2009/03/13~2009/03/15

BankART Studio NYK[神奈川県]

「さよなら工芸」展とほぼ同時期に同会場で行なわれていた展覧会。いわゆるメディアアート系の作品が大半を占めていたが、工芸展に比べると作品の仕上がりが全体的に荒いように見受けられた。道路交通法の条文の上をミニカーで縦横無尽に走らせ、その条文をプロジェクターで投影するとともに、音声ソフトによってランダムに音読させる多田ひとみの作品は、コンセプトが面白いものの、ミニカーを自動的に動かす仕組みにやや難点が残り、残念。改良して発表してほしい。

2009/03/13(金)(福住廉)

平泉 みちのくの浄土

会期:2009/03/14~2009/04/19

世田谷美術館[東京都]

11~12世紀にかけて浄土思想にもとづいた仏教文化が栄華を極めた平泉。本展は、中尊寺や毛越寺に残された仏像や名宝、およそ200点あまりを寺外ではじめて公開するもの。見所は、《国宝 中尊寺金色堂西北壇壇上諸仏》と《国宝 金光明最勝王経字宝塔曼荼羅図》を至近距離で鑑賞できること。とりわけ、経文を宝塔のかたちに書写した後者は圧巻。新国誠一の系譜の起源がここにある。

2009/03/13(金)(福住廉)

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白井剛「blue Lion」

会期:2009/03/13~2009/03/15

東京芸術劇場 小ホール1[東京都]

休憩込みで150分。動物園のキリンや象やライオンが舞台奥のスクリーンに大写しされ、その前で、鈴木ユキオと寺田みさこが床に敷き詰めた白砂に突っ伏している。彼らとともに、ギター奏者、アコーディオン奏者、鍵盤などの演奏者、ヴォーカリストの4人が舞台上で共演する。前半は、ぼんやりとした淡い時間が続く。後半は、照明が明るいなどメリハリは出てきたのだけれど、前半と後半の違いは?など明確ではない部分が気になってしまう。全編、演奏を起点に、さまざまな場面が次々と舞台に置かれてゆく。出演者の自伝的な場面もあれば、絵本を鈴木と寺田で読み合うファンタジックな場面もある。要素は多様だが、それらをどう統合すればいいのか判然としない。判然としないので、作家の意図(エゴ)を探してしまう。見つからないので、全体が作家のメッセージ?などとわかろうとするが、その時点で白井剛という人間に興味のない(けれども、ダンス作品には興味のある)観者は取り残されることになる。それだから、静謐な雰囲気が印象に残った作品だった、などと穏当な結論に行き着かざるをえなくなる。

2009/03/13(金)(木村覚)

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