artscapeレビュー

2010年06月01日号のレビュー/プレビュー

赤松玉女 個展

会期:2010/04/27~2010/05/09

ギャラリーすずき[京都府]

滲みを生かした画風で、魅惑的な女性たちを描いている。おそらく海外のファッション誌や映画誌がネタ元であろう。刹那的なポップアイコンが永遠性を宿した肖像画として転生するのが興味深い。肖像画という古色蒼然としたジャンルを洗練されたスタイルでよみがえらせた点も評価されるべきだ。会場の片隅にはわが子と共作したドローイング作品も展示されていた。肖像画とはまったく違う雰囲気だが、不思議なバランスで釣り合いがとれていた。

2010/04/28(水)(小吹隆文)

浅田政志 写真展 Tsu Family Land

会期:2010/04/17~2010/05/30

三重県立美術館[三重県]

家族でコスプレしてさまざまな職業や状況の写真を制作する浅田政志が、故郷の美術館で大規模個展を開催した。館内をレジャーランドと仮定し、作品だけでなくアトラクション的要素やショップ、記念撮影コーナーまで設けたサービス精神たっぷりの内容で、もちろん展示室内の撮影もOK。溢れる家族愛に感化されるのか、地元への愛に満ちているからか、観客の誰もが優しい表情で展覧会を楽しんでいる。型破りな展示構成はもちろん、地元市民との距離を縮めるという意味でも、公立美術館の企画として出色と言えるだろう。

2010/05/03(月)(小吹隆文)

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國府理 展 surreal instruments

会期:2010/05/04~2010/05/16

アートスペース虹[京都府]

交通事故で身体にハンデを負いながらも制作意欲を失わない友人アーティストをリスペクトして、風変わりな車椅子と松葉杖を制作。車椅子は応接間の豪華な革張りソファーを流用したもので、モーターで稼働する。松葉杖は尖端に武器を装備したぶっ飛んだ造形だ。どちらも実用化に向けたものではないが、こうした道具にアーティストやデザイナーが目を向けるのは大切なことだ。彼らが格好いいデザインを提案し続けることで、車椅子や松葉杖への先入観を変えることができるかもしれない。

2010/05/04(火)(小吹隆文)

神馬啓祐 展

会期:2010/05/03~2010/05/15

2kw gallery[大阪府]

不透明な中間色を薄く溶いて、直線、曲線、色面などを複雑に交錯させた絵画作品。画面いっぱいに要素が詰め込まれているのに、決して雑然としていない。また、構成要素を並立的に配置しているのに奥行きが生じているのも興味深かった。作者が不在だったので詳細はわからないが、どうやら厳密なルールに基づいて描かれているようだ。独自のスタイルをもった抽象絵画を描く若手の登場に、絵画の新たなトレンドを感じた。

2010/05/06(月)(小吹隆文)

アートフェア京都

会期:2010/05/07~2010/05/09

ホテルモントレ京都 4階客室[京都府]

ホテルのワンフロアを会場に、33の画廊と2つの企画が参加。形式自体に新味はないが、京都初の本格的現代アートフェアとして注目を集めた。というのも、京都は作家を多数輩出しているが、現代アートのマーケットではないというのが通説だからだ。しかし、近代以前の美術工芸のコレクターは確かに存在するし、観光資源と組みわせることで地元以外の客層を呼び込むこともできる。工夫次第で京都を現代アートのマーケットとして確立できるのではないか、というのが主催者たちの思惑だったようだ。本稿執筆時でまだ正確な成績は確認できていないが、独自に幾つかの画廊にリサーチしたところ、予想よりも好結果だったとの返事を得た。もちろん画廊により好調・不調はあろうが、全体としては良好なスタートを切れたのではなかろうか。2年目以降の更なる飛躍に期待が持てそうだ。

2010/05/07(金)(小吹隆文)

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