2017年11月15日号
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artscapeレビュー

珠かな子 改名記念展「マタギタマ」

2016年06月15日号

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会期:2016/05/06~2016/05/15

神保町画廊[東京都]

珠かな子は、自撮りによるややエロティックな写真を「村田タマ」名義で発表してきた。可愛らしい容姿で人気があったのだが、自分の写真の世界をどんなふうに展開していくのか、方向性を定めきれない揺らぎが、魅力的でもあり心配でもあった。だが、今回の「改名記念展」を見て、彼女のなかに、写真を撮り続けることの覚悟がしっかりと育ちつつあるように思えた。
「マタギタマ」というタイトルは、「村田タマ」から「珠かな子」へと跨いでいくという意志表明と、文字通りの「マタギ」とのダブルミーニングである。マタギ(猟師)の「自分の命を晒して猟をする。そして命に敬意をはらって食す」という生き方と、「少女から大人になり、子供を孕み産む」という自分の姿とを、写真行為を通じて結びつけようという意図が、今回のシリーズには明確に貫かれている。それを象徴するのが本物の熊の毛皮(会場に展示してあった)で、それを身に纏ったり、画面の中に取り込んだりしたセルフ・ポートレートが、展示の重要なパートを占める。それに加えて、テディ・ベアや小熊フィギュアの「カワイイ」イメージがちりばめられており、強さと弱さ、美しさと醜さ、気高さとポップな俗っぽさとが、引き裂かれつつ同居していた。「自撮り」写真を、ナルシシズムに溺れることなく、かといって退屈な繰り返しに陥ることもなく、どんなふうに展開していくのかというのは、多くのセルフ・ポートレートの写真家に共通する課題だが、その答えのひとつがここにあるのではないだろうか。

2016/05/06(金)(飯沢耕太郎)

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