2017年11月15日号
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artscapeレビュー

麗しき故郷「台湾」に捧ぐ 立石鐵臣展

2016年06月15日号

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会期:2016/05/21~2016/07/03

府中市美術館[東京都]

立石鐵臣という名を聞いてタイガー立石(立石太河亞)の親族だと勘違いしたのは、単に名字が同じだったからだ(臣と亞も似てるでしょ?)。略年譜を見ると、鐵臣の長男は偶然にもタイガーと同年の1941生まれ。でも親子ではなさそうだ。ま、それはともかく、立石鐵臣は台湾に生まれ、日本で日本画を学んだあと、岸田劉生や梅原龍三郎に師事。第2次大戦までは日台を往復しながら絵を描いていたが、戦後は日本で国画会を中心に発表してきた。といってもいわゆる団体展系の絵とは違って、日本画、梅原、細密画、シュルレアリスムといった相反する要素が作品ごとに割合を変えながら出現するという不可解な画風なのだ。例えば今回日本初公開になる《台湾画冊》は、戦前の台湾の風俗を墨で絵日記風に描いたもので、絵と言葉による的確な描写は歴史的資料としても貴重なものだろう。その一方で、植物や昆虫の図鑑のために描いた細密画は、もはや図版用の原画の域を超えて超絶技巧が一人歩きしている(そういえば彼は初期の美学校で細密画工房をやっていて、それで名前を見たことがあるのだ)。さらに晩年にはこれらのスキルを総動員して、《月に献ず》《春》《身辺 秋から冬へ》みたいなシュールな細密画を試みたかと思えば、最晩年には《焼岳(昼)》のように梅原流の表現主義的な風景画に戻ったりもしている。この、どこに着地するかわからない振れ幅の大きさこそ、いまどきのアーティストに欠けているものではないか。

2016/05/21(土)(村田真)

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