2017年11月15日号
次回12月1日更新予定

artscapeレビュー

蜷川実花「ファッション・エクスクルーシヴ」

2016年06月15日号

twitterでつぶやく

会期:2016/04/23~2016/05/08

表参道ヒルズ スペースオー[東京都]

東京・原宿の表参道ヒルズ開業10周年記念展として開催された、蜷川実花「ファッション・エクスクルーシヴ」展に向かう階段の上から会場を見渡した時、空気がどよめいているように感じた。蜷川独特の浮遊する原色の塊が、強烈なエネルギーを放射しており、それが周囲の環境にまで影響を及ぼしている気がしたのだ。近頃あまりお目にかかれない、会場全体をある種のワクワク感が包み込んでいるような展示だった。
主に天井から吊り下げられた、広告・ファッション写真85点を見ていると、蜷川が2000年代以降の時代のテイストを汲み取りつつ、じつに的確にヴィジュアル化し、撒き散らしていったことがよくわかる。広告・ファッション写真が果たすべき役割は、もちろん企業イメージを視覚的情報として打ち出していくことだが、それは同時に「時代の鏡」に磨きをかけていくことでもある。2000年代の日本のヴィジュアルはまさに「蜷川実花の時代」であったと断言してもいいだろう。
いつも不思議に思うのは、蜷川が「アート」としての側面を強調した写真を発表する時、広告・ファッション写真から発する輝きやオーラが、薄まり、弱まってしまうように感じることだ。天性のヴィヴィッドな色彩感覚や、ひとつの場面を細部まで緊密に気を配って(とはいえその場の臨場感は保ちながら)組み上げていく能力の高さは、むしろ「アート」作品にこそ活かされるべきではないかと思う。むろん蜷川本人は、そのあたりのことはとっくの昔に承知していて、世界戦略のなかに組み込んでいるかもしれない。

2016/05/08(日)(飯沢耕太郎)

▲ページの先頭へ

2016年06月15日号の
artscapeレビュー

文字の大きさ