artscapeレビュー
VOCA展2016 現代美術の展望─新しい平面の作家たち
2016年04月15日号
会期:2016/03/12~2016/03/20
上野の森美術館[東京都]
今年は全体的にレベルが高かったような気もするが、印象に残る作品は少なかったような気もする。単にぼくの感受性と記憶力が摩耗しただけかもしれないけれど。そんななかで印象に残った作品をいくつか挙げると、まず、自宅のガラス窓に感光材を塗って外の風景を焼きつけた鈴木のぞみの《Other Days, Other Eyes》。ニエプスの史上初の風景写真のように、モノクロの風景が白く飛んでいて、自宅の窓に染みついたノスタルジーまでもが増幅されている。窓枠が額縁の役割を果たしているのもグッド。グラフィティの要素を抽出してキャンバスに構成した大山エンリコイサムの《FFIGURATI #117》は、壁の代わりにキャンバスに描いたというより、キャンバスを壁化したというべきか。絵画の公と私、内と外を考えさせる。ピンク色のオールオーバー絵画3幅対を出した今実佐子の《そして今日もまた眠るだけ》は、口紅やファンデーション、アイシャドウなどの化粧品を塗ったもの。絵として見てもけっしておもしろいもんではないけれど、もともと顔に塗られるべき素材がキャンバスに塗られていること、洞窟壁画以前の最初の絵画はおそらく化粧や刺青であったこと、などを考えると興味深いものではある。これは自画像である、と比喩でなくいえる。
2016/03/17(木)(村田真)