artscapeレビュー
只在此山中 廖震平
2017年06月15日号
会期:2017/05/12~2017/05/28
トーキョーアーツ・ギャラリー[東京都]
廖震平はBankARTにスタジオを構える台湾出身のアーティスト。彼が描くのは写真に基づいた風景画だが、一見フォトリアリズム風の写実絵画に見えながら、どこかちょっと不自然なところがあり、CG画像のようにも見えなくはない。それは構図を決めるとき、画面を上下左右あるいは対角線で2分割したり、モチーフを左右対称に収めたり、建物や道路など人工物の幾何学形態と自然の曖昧な形態を交互に組み合わせたりするからだ。
今回は昨年、高野山と伊勢への旅の途中で撮った写真に基づいて描いたもの。例えばDMにも使われた絵は、手前に2本の木が並行して立っているが、その2本の隙間が画面を左右に2分割する中央線となる。また山の斜面は大ざっぱに左上から右下へ走っているが、その内側に左辺と下辺の中心を結ぶ斜線が見え、その内側が黒く塗りつぶされている。さらに目を凝らすと、遠方にかすかな稜線が見え、これが上下を2分割する中央線となっている。このように廖の作品はただ写真をなぞっているだけでなく、きわめて周到に構成されていることがわかる。
2017/05/12(金)(村田真)