artscapeレビュー
ライアン・ガンダー─この翼は飛ぶためのものではない
2017年06月15日号
会期:2017/04/29~2017/07/02
国立国際美術館[大阪府]
ライアン・ガンダー、1976年イギリス生まれ。40歳そこそこの海外のアーティストに国立美術館全館を使った個展とコレクション展を任せるというのも、なかなかないことだ。さぞかしおもしろいに違いないと思って新大阪で降りて見に行ったら、本当におもしろかった。これはさっき広島市現代美術館で見たブルース・ナウマンの映像と同質のもので、出会い頭いきなりトンチクイズを出されたみたいな、いいかえれば自分の知識と想像力をフル回転させなければ先へ進めないような、そんなアートだ。
例えば、壁に埋め込まれた目玉と眉。近寄ってみるとクルクルと動く。タイトルは《最高傑作》。この作品は東京でも見たことあるが、今回新作として《あの最高傑作の女性版》もある。たしかに眉が細くてまつげもついている。タイトルはシャレでつけてるようでかなり重要だ。というかタイトルと作品を突き合わせることで効果が倍増する。汚れた台座の上に置かれた黒い小さな呪術人形は《僕の魔力はどこにいってしまったの?》、壁の下のほうに穴をあけた作品は《僕はニューヨークに戻らないだろう》、床に英語の書かれた紙クズが置かれているのは《あまりにも英国的というわけではないが、ほぼ英国的な》、床や壁に数千本の黒い矢が斜めに刺さっているインスタレーションは《ひゅん、ひゅん、ひゅうん、ひゅっ、ひゅうううん あるいは同時代的行為の発生と現代的表象と、斜線の動的様相についてのテオとピエトによる論争の物質的図解と、映画の100シーンのためのクロマキー合成の試作の3つの間に》と題されている。デタラメな番号を振られたガイドを見ながら、みんな右往左往するしかない。
2017/05/05(金)(村田真)