artscapeレビュー

内倉真一郎「十一月の星」

2018年08月01日号

会期:2018/07/13~2018/08/04

EMON PHOTO GALLERY[東京都]

東京・広尾のEMON PHOTO GALLERYが主宰するEMON PHOTO AWARDも回を重ね、昨年第7回目を迎えた。今回開催された内倉真一郎の個展は、そのグランプリ受賞の記念展である。どちらかといえば現代美術寄りの作品が目立っていたEMON PHOTO AWARDの受賞作だが、今回の内倉の「十一月の星」は、モノクロームの正統派の写真作品である。僕も審査員のひとりだったのだが、受賞が決定したとき、彼の写真のやや古風なたたずまいが、ギャラリーのスペースにうまくフィットするかどうかがやや心配だった。だが、結果的には、応募作よりもひと回り作品のスケールが大きくなるとともに、ギャラリーの空間構成にあわせて弓形に作品を吊り下げるインスタレーションもうまく決まって、見応えのある展示になっていた。

内倉は 1981年、宮崎県生まれ。今回の展示のテーマは2016年の第一子の誕生である。ともすれば紋切り型な解釈に陥りがちな被写体ではあるが、クローズアップを多用してストレートな表現を心がけ、赤ん坊の生命力の根源に迫ろうとしている。審査の時点では、テンションの高い写真が多く、やや押し付けがましく感じるところもあった。だが、展示では植物や風景のイメージをうまく配して表現を和らげている。また妊娠中の妻の写真を加えたことで、シリーズとしての膨らみも生じてきた。

とはいえ、この作品は文字通りのスタートラインだと思う。新たなテーマにもチャレンジすることで、作品世界のさらなる展開を期待したい。

2018/07/19(木)(飯沢耕太郎)

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