artscapeレビュー

手塚愛子展「Dear Oblivion ─親愛なる忘却へ─」

2019年10月01日号

会期:2019/09/04~2019/09/18

スパイラルガーデン[東京都]

織物の糸を部分的に抜くことで織物に別の価値を与える、そんな織物の解体と再構築をテーマにしてきた手塚の個展。今回はスパイラルの大空間に大作を吊るしている。幕末に討幕運動の軍資金を得るため輸出用につくられた薩摩ボタンをモチーフにした《必要性と振る舞い(薩摩ボタンへの考察)》をはじめ、明治時代に洋装を初めて採り入れた昭憲皇太后の大礼服にヒントを得た《親愛なる忘却へ(美子皇后について)》、インド更紗にレンブラントの大作を重ねた《華の闇(夜警)》など、見応え、読み応えのある作品が並ぶ。初期のころは解体された織物の色彩と形態に目を引かれたが、最近は美術史や女性史との関わりへと彼女自身の関心が広がっているように感じる。手塚の関心は絵画にあるはずなので、これらは織物の解体と再構築というより、シュポール/シュルファスにも通じる絵画の解体・再構築と見るべきだろう。まだまだ化けそうだ。

2019/09/07(土)(村田真)

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