2020年06月01日号
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artscapeレビュー

平本成海展 narconearco

2020年04月15日号

会期:2020/02/18~2020/03/14

ガーディアン・ガーデン[東京都]

平本成海は昨年の第20回写真「1_WALL」展のグランプリ受賞者。受賞記念の個展として開催された本展には、平本の自宅に毎日届く新聞(地方紙)に掲載された写真をピックアップして加工、コラージュした作品が並んでいた。コラージュ作品は、その日のうちにSNSにアップされる。今回展示された「narconearco」に付された記事は、たとえば次のようなものだ。「このうち境内入り口に設置された一台に、17日23時50分ごろ、目出し帽を被った不審な人物が本殿に入っていく姿が映っていた。燃やされた発光如来が納められていた厨子には、ナルコネアルコのようなものでこじ開けた痕跡があったことが分かっている」。

つまり、地方新聞の写真と記事を基にしたフェイク・ニュースを作って、個人的な回路で流通させるというアイディアである。記事も写真も洗練された手つきで作られていて、視覚的なエンターテインメントとしても十分に楽しめる。ただ、「ナルコネアルコ」とは何かということを突き詰めようとすると、出口のない迷路に入り込んでしまう。

「1_WALL」展の審査員のひとりの増田玲は展覧会に寄せたコメントで「どうやら受信者として指定されているらしい私たちに期待されているのは、個々のイメージの謎を解くことではなく、それらを謎として受けとる私たちの思考そのものを観察することなのではないか」と書いている。それは確かにその通りなのだが、もし「ナルコネアルコ」をめぐる不条理な事件が、互いに結びついて、より大きな「謎」として提示されていけば、平本の作品世界はもう一回り広がりと深度を増すのではないかと思う。もうひとつ、会場にはコラージュ作品が並んでいるだけで、テキスト(記事)は省かれていた(リーフレットに一部掲載)。やはり画像とテキストが一体化したインスタレーションのほうがよかったのではないだろうか。

2020/03/09(月)(飯沢耕太郎)

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