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アバロス村野敦子「Fossa Magna—彼らの露頭と堆積」

2020年04月15日号

会期:2020/03/06~2020/04/19(延長)

POST[東京都]

アバロス村野敦子の「Fossa Magna—彼らの露頭と堆積」は、「見えるもの」と「見えないもの」、「大きなもの」と「小さなもの」のあいだを想像力でつなぐ、とても興味深いプロジェクトである。フォッサマグナとは、ドイツの地質学者エドムント・ナウマンが1880〜90年代に発表した本州中央部の大地溝帯のことである。西端は新潟県糸魚川と静岡県大井川を結ぶ線上に、東端は新潟から千葉にかけての線上にあるフォッサマグナには東京も含まれている。村野は、ナウマンのフォッサマグナ発見のエピソードに強く惹かれ、同地溝帯の地表に露出した岩盤を中心に撮影し始めた。やがて、彼女は自分が暮らす東京の日常にも目を向けるようになる。そこにも、さまざまな「地殻変動」が生じており、日々の出来事が「堆積」し、それが「露頭」として目に見えるかたちで出現してくるからだ。

今回のPOSTの展示では、フォッサマグナの「露頭」を撮影した写真群(実物の岩の破片も含む)、日常生活を撮影したスナップ写真、夫のアバロス・カルロが書いた漢字練習帳やナウマンの論文などを複写した写真などで構成されていた。会場のスペースに限界があるので、インスタレーションがうまくいっていたとはいえない。特に日常生活のパートは、もう少し拡充してもいいだろう。だが、さらにこのプロジェクトを展開していけば、より広がりと深みのある展開が期待できそうだ。

なお、このシリーズは、2017年度の写真家オーディション「SHINES」(キヤノンマーケティングジャパン主催)で町口覚が選出し、彼の造本で30部限定の写真集を刊行している。その「Drifting across the sea, Searching for a place to belong, Finding a new home, And calling in their own. Just like the Fossa Magna, Years gone by, Layer by layer, Unseen, but to be known」という長いタイトルの写真集の増刷版も刊行され、会場で販売されていた。写真集には、アバロス・カルロの詩的なテキストが、写真と写真のあいだを縫うようにレイアウトされている。写真とテキストとの絡み合いが、重層的、多次元的な内容とうまくマッチしていた。

2020/03/11(水)(飯沢耕太郎)

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