artscapeレビュー

ネオ・ダダの痕跡

2020年04月15日号

会期:2020/03/18~2020/04/04

ギャラリー58[東京都]

1960年に結成され、わずか半年ほどで解体した前衛芸術集団ネオ・ダダの、結成および解散60年を記念した展覧会。出品は元メンバーの赤瀬川原平、風倉匠、篠原有司男、田中信太郎、吉野辰海の5人。昨年田中が亡くなったので、現役はギューちゃんこと篠原と吉野の2人となった(その数日後、メンバーではないが彼らと親交の深かった秋山祐徳太子の訃報が届いた)。

出品作品はネオ・ダダ時代のものではなく、1970年に出たウィルヘルム・ライヒの『きけ 小人物よ!』(太平出版社)の挿絵として描いた赤瀬川のペン画から、ニューヨーク在住のギューちゃんがこの春に制作した最新作まで、素材もサイズも制作年もバラバラ。そこがネオ・ダダらしいけど。なかでも目立つのが、パリ旅行の思い出を描いたギューちゃんの大作ペインティング《パリだぜ! 牛ちゃん─親友、木下新に捧げる》だ。パリへはこの1月、ルーヴル美術館の「レオナルド・ダ・ヴィンチ展」を見るために訪れたそうで、巨大画面にはルーヴルのピラミッドやサンジェルマンで食事する夫妻などが描かれているらしいが、なにがなんだかさっぱりわからない。画廊の人がギューちゃんに図解してもらったそうだが、そのスケッチを見ても、ピラミッドらしきものは認められたものの、後はさっぱり。でも色彩とタッチは以前にも増して激しい。

今年米寿を迎えるギューちゃんは、メンバーのなかでも最年長だが、元気いっぱいで毎日ニューヨークから電話をかけてくる、という話を画廊の人がしていたら、本当にかかってきた。なりゆきでぼくもお話しさせてもらったが、声に張りがあってトシを感じさせず、驚いた。いま新型コロナウイルスでニューヨークもパリも大変な騒ぎで、ルーヴルも閉鎖され、飛行機にも乗れないから、1月に行っといてよかったという話だった。ギューちゃん、コロナに気をつければ100歳までいけそう。

2020/03/28(土)(村田真)

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