artscapeレビュー

バンクシー展 天才か反逆者か

2020年10月01日号

会期:2020/03/15~2020/10/04

アソビル[神奈川県]

バンクシー非公認の「バンクシー展」だし、グラフィティじゃなくて版画だし、サブタイトルが陳腐だし、日時指定の予約制だし、会場が聞いたこともないエンタテインメント施設だし、なのに料金が1800円と高いし……。友人が予約して金まで払ってくれなきゃ行かなかったでしょうね。でも見てみたら、版画とはいえたくさんあるし、ドキュメント写真や映像もけっこうあるし、カタログもそれなりにしっかりつくっているし、得したとまでは言わないけど、損はなかった。

会場に入ると、バンクシーのスタジオらしきものが再現され、黒ずくめで顔が見えないバンクシーらしき人形も置かれ、ちょっと怪しい雰囲気。展覧会は、うやうやしく額縁に収まった版画を中心に、ステンシル作品や直筆のメモなどが並び、合間にライティング現場の写真、「ディズマランド」や「ザ・ウォールド・オフ・ホテル」などのプロジェクトを写真や映像で紹介する構成。版画の多くはどこかの壁に書いたグラフィティを焼き直して商品化したものだが、ストリートで見るのと違って、どうしてもウィットに富んだポスター程度にしか見られないのが致命的だ。もちろん、グラフィティは限られた人しか見られないから、より多くの人に見せたいとの思いがあったのだろう。でもそれより近年は、テーマパークをつくったりホテルを運営したり慈善運動までしているので、その資金に充てるのが目的に違いない。

作品数は思ったより多く、こんなにつくっていたのかと驚くが、しかし数打ちゃ当たるで凡作が多いのも事実。それにイギリスやEUに関する時事ネタが多く、英語も多いので、日本人には理解しづらい作品も少なくない。要は見て楽しむより、読み解いて納得する図柄なのだ。まあそんなことも含めて、いろいろ知ることができたのは無駄ではない。いずれにせよ、バンクシーにとってはストリートアートが主で、版画はあくまで従、もしくは必要悪と思っていたから(実際そうだけど)、展覧会もショボいに違いないと期待していなかっただけに、いい意味で裏切られた。いっそ版画をなくして、ストリートの現場写真やドキュメント映像だけ見せたほうが、よりバンクシーらしさが伝わると思う。

2020/09/15(火)(村田真)

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