2020年11月15日号
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artscapeレビュー

オノデラユキ FROM Where

2020年10月01日号

会期:2020/09/08~2020/11/29

ザ・ギンザスペース[東京都]

現在パリに住むオノデラの、90年代の「camera」シリーズ3点と「古着のポートレート」シリーズ15点の展示。いずれもモノクローム写真。「camera」シリーズは文字どおりカメラを前面から撮ったもの。カメラ自体のセルフポートレート? といいたいところだが、文字が反転していないので鏡に写して撮ったわけではなく、カメラ2台を相対させて撮影したという。しかも光は写す側ではなく、被写体のほうのカメラのフラッシュを焚いて撮ったというのだ。たとえは悪いが、相手のフンドシで相撲をとったってわけ。コンセプチュアル・フォトともいえるが、予期せぬ光が入り込んでいたり、なにか割り切れない空気感を漂わせる作品だ。

一方「古着のポートレート」は、1993年に渡仏したオノデラが注目を集めるきっかけとなったシリーズ。これは、クリスチャン・ボルタンスキーが個展で使用した古着を袋一杯10フランで購入し、モンマルトルのアパルトマンで空を背景に撮影したもの。誰が着たかわからない古着だが、主人不在の服だけが所在なさげに立ちすくんでいるさまは、まるで亡霊のようだ。あるいは、曇天の空を背景に屋外で撮影しているせいか、建築のような印象も受ける。ただし、シワが寄ったり形が崩れたりしているので、くずおれそうな廃墟か。柔らかい服と固い建築は正反対にも思えるが、いずれも人間を包み込み、守るものという点では似たような存在だ。とりわけ古着と廃墟は、人の不在を強烈に感じさせる点で近い。

しかし古着も廃墟も、安い量販店の進出やたび重なる都市の再開発で絶滅の危機に瀕している。それはマニュアルカメラも、モノクロームプリントも同じ。これらの作品に漂うノスタルジアは、写された対象からだけでなく、写すメディアからも醸し出されているのだ。

2020/09/10(木)(村田真)

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